第14話 変わらずに

ほのかとは兄妹になった訳ではない。

一次的に俺の家に避難するだけだ。

だけどなんだろうなこの感情。

なんかその。

ほのかと別れたくない感情がある。

こんな俺がそんな気持ちを抱いたらいけない気はするんだが。


「ほのか。お待たせ」


部屋に戻ってからスマホを取って降りて来る。

それから先に玄関先に行っていたほのかに話しかける。

ほのかは真新しいその制服姿で俺に向いて「いえ」と笑みを浮かべて言う。

俺はその姿を見つつ「じゃあ行こうか」と話す。


「はい。...あ」

「...?...どうした?」

「恋人兼兄妹ですよね」

「...あ、ああ」

「かずちゃん」

「...かずちゃん!?」

「はい。和彦さんっていうのもおかしいですしお兄ちゃんっていうのもおかしいかなって」

「い、いや...それは流石に...」


「駄目ですかね?」と話すほのか。

俺は「い、いや。まあそうしたいならそれでも良いけど」と少しだけ赤くなる。

するとほのかは「じゃあかずちゃん。手を繋いでくれますか?」とまた笑顔になって俺に言ってくる。

手を繋ぐってオイオイ。


「ほのかは良いのか」

「良いのかというのは?」

「俺達は兄妹なんだぞ」

「でも血は繋がってないですしね」

「...まあそうしたいなら」


そして俺はほのかの華奢な手を握る。

細くて折れそうなその華奢な可憐な手を。

するとほのかは「嬉しいです」と言いながら俺を見上げる。

俺は少しだけ頬を掻く。


「かずひこー!!!!!」


そんな大声が聞こえた。

背後を見ると由香里と元春が居た。

俺達に由香里が容赦なく手を振っている。

そして近付いて来て...由香里は衝撃を受けた顔をした。


「手を...繋いでいるだと...」

「お前な。霊圧は消えてないぞ」

「どうしたんだ」

「元春。実はな」


そして俺は意を決して全てを説明した。

すると...由香里は「...そうなんだね」と納得した。

元春も「成程な」と呟いた。

このタイミングで説明する羽目になるとはな。


「...良いんじゃないか」

「元春...」

「俺はお前には幸せになってほしいと思っていた」


俺は「!」となりながら元春を見る。

元春は変わらずの巌の様な表情を少し柔らかくしながら笑みを浮かべる。

由香里も柔和な顔をした。

そして俺達は移動を開始した時。


「はろー」


そんな男の間抜けな声がした。

背後を見ると...見た事のある顔があった。

それは初期の段階でほのかに関わっていた男ども。

しかし人数が違う。

10人ぐらい居る。


「...なんだ」

「新山和彦くんだっけ?君に用事があるんだけど」


俺は咄嗟に由香里とほのかを後ろに回す。

すると男達が俺達を取り囲んだ。

面倒な。

そう思いながら俺は「なんすか」と聞いてみる。

男達は「覚えてる?ナンパしていた奴の顔を一発殴ったでしょ?そいつらの先輩でね。俺ら」と言う。

ああ確かに覚えている。

嫌がっているほのかを救う為に仕方がなく胸ぐらを掴んできて腹を殴られたので殴り返したな。

で。


「...それの復讐っすか」

「後輩さ。歯が折れたんだわ」

「...」


俺も結構痛かったんだが。

まあそんな事を言っている場合でもないな。

そう思いながら俺は「それで?保険金でも支払えってやつですかね」と聞いてみる。

すると男達は「要らねぇよ。テメェの歯を折りに一発殴りに来ただけだ」と怒りながら言い出す。

俺は溜息を吐いてから薄目をする由香里と怯えるほのかを見る。

彼女達を逃がすには人数が多いな。

しっかし俺のファンも多いね。


「で?彼女達は逃がしても良いっすよね?」

「彼女達は俺達が貰うんで」

「可愛い子達だわ」


そう言うクソ馬鹿ども。

俺は仕方がなく鞄を下ろそうとした時

吹雪の様な寒さを感じた。

見ると元春が「すいません。相手にするなら俺だけにしてくれますか」と言葉を発する瞬間だった。

先輩という男は少しだけ寒気に怯みながらも笑みを浮かべたまま「...お前この人数相手に出来んの?1人で?」と嘲笑う様に言った。

俺は「...任せても良いのか。元春」と言ってから元春を見る。


「...」

「...あ」


元春は俺の言葉に答えない。

これは...マジ切れしている気がする。

こんな姿を見たのは1年ぶりだ。

思いながら「元春。警察は呼んだから」と言ってから俺は「由香里。すまないがほのかを連れて逃げてくれるか」と言う。

すると男が2人の前に立ち塞がる。


「行かせねぇよ」


そう言った男が宙を舞った。

1メートルぐらいは吹っ飛んだ。

元春の垂直一発蹴りで容赦なく吹っ飛んでいた。

不良の先輩とやらは顔を引きつらせる。

俺ですら顔を引き攣らせる。

なんという強さだろうか。


「なんだコイツのパワー!?」

「マジかよ!?やっちまえ!!!!!」


俺は元春を助けようとした。

だが元春は「スーパーヒーローが手を出すまでもない」と言ってから残り8人をフルボッコにした。

残り1人は怯える。


「...で。残りはお前だけなんだがどうする」


元春は脅す様に話しかける。

するとパーカー姿のその1人はサバイバルナイフの様なものを出した。

こ、コイツ!

そう考えながら「元春!流石に危ない!」と言う。

こんなの予想外だ。


「死ねよ!!!」


そして元春を見つつ突っ込んでくるが元春は変わらずの対処でサバイバルナイフを躱して腹を蹴り飛ばす。

地面に男は叩き伏せられた。

気絶した様だった。

俺は「元春...」と元春を見る。


「嬉しかった」

「...な、何がだ?」

「お前が俺にその真実を全てを話してくれた事が。だからこうして力が湧いたというのもある。倒せたというのもある」

「...!」

「スーパーヒーロー。お前はいつまでもそのままで居てくれ」


元春はそう言いながら微笑む。

それからサイレンの音がしてから10人全員が俺らの説明で捕まった。

俺らも事情を聴かれる。

後から戻って来た由香里とほのかにも。

そして俺達は遅れながら高校に登校した。

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嫁が寝取られたのもあり絶望の淵で自殺したらタイムリープした。そのタイムリープした世界で嫁の妹を暴漢から救ってしまったのだが 楽(がく) @tanakasaburou

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