第65話 深海
「くそ、このメイド、手加減なしに殴りやがって」
腹を押さえながらジェットは悪態をつく
「エヴァさん、この男は殺人犯ですよ、自由にしちゃダメだ」
メノウはジェットに指を刺しながらいう
「はあ!?お前なんか、殺し屋の一味じゃねーか!」
「なによ?」
「やるのかてめえ」
二人の視線が火花を散らす
「黙りなさい。それとも黙らして欲しいのかしら?」
左の目にアイパッチをつけたメイドは眉ひとつ変えずにショルダー拳銃を抜いて二人に突きつけた
ドットサイトが搭載されたその拳銃は異形だった
メノウはこんな銃を見たことがない
銃身は樹脂製
銃口が普通の銃口よりも低く開いている、その姿は拳銃を模して作られたおもちゃのように見える
未来的であり、芸術的であり・・・、異様な雰囲気のする銃だった
「ラウンドアーセナル社の『ドラゴン』か。随分マニアックな銃を持っているじゃねえか」
ジェットは手を上げながらいう
「格好と一緒で奇抜なのが趣味かい?」
メイドは右の目で睨んだ
闇のような黒い瞳は静かに殺意を秘めている
ここで下手なことを言えば、容赦無く撃ち殺される
ジェットにそのことを伝えるほどには、その殺気と殺意は具体的なものだった
「軽口はいい。お前たちをお連れしろと、この屋敷の旦那様がお呼びなのよ」
旦那様?
確かにメイドには主人がいてもおかしくはない
その旦那様という人物がこの屋敷の持ち主ということか?
「ここは、どういうところなの?私たちはなぜ、ここに連れてこられたの?」
「ここは
メノウが聞いたことのない街である
ここは本当に海上都市ベネグラスの中の街なのか
その名を聞いてジェットの顔色が変わる
「
ジェットは人が変わったように必死でエヴァに詰め寄った
「
ジェットの脇腹にエヴァは無言で拳を叩き込んだ
「ぐはっ!」
ジェットは床に再びうずくまる
「私に触れるな。そして私は、その
盾と銃を呼び出すためにメノウはゴルゴンの腕輪に手を掛けようとする
ズドン!
メノウの髪を『ドラゴン』と呼ばれる白色の銃から放たれた弾丸が掠めた
「次はない」
エヴァは硝煙を上がる異形の
「私の気が変わらないうちに、その魔術の腕輪をこっちによこしなさい」
「わかった・・・」
メノウはメイドに向かってゴルゴンの腕輪を投げる
アダマンチウム製の
あれがなければ武器を取り出すことはできない
これでメノウは丸腰になってしまった
「旦那様とはどんな人なわけ?」
メノウはエヴァを睨みながら尋ねた
「この街を納める方よ。無礼のない挨拶を考えておきなさい」
隻眼のメイドは感情を込めることなく淡々と述べた
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