第49話 ケルベロス
それから、七日後
ブライドは無事に退院した
そして、次の日、メノウと共に再び、ダイダロスのビルを訪れた
相変わらず、武器の展示場になっているフェイの部屋に通された
フェイが机の上に置かれた黒いカバンを持ち上げる
「退院おめでとう。これは俺からの退院祝いだ」
フェイはブライドに黒いカバンを差し出した
「何ですか、それ」
興味津々にメノウはまじまじとカバンを見つめる
「退院祝いというからには、お菓子か何かですか?」
「違う。まあ、ガトーショコラでも、よかったのだがな。それより、素晴らしいものだ。フェイ、見せてもらうぞ」
ブライドは楽しげに微笑みながら、カバンを開ける
カバンには赤い布が引かれており、そこに鎮座するように存在感を醸し出す、漆黒の銃が置かれていた
銃身は軽量化のためにスリットされた部分から、魔術文字が刻まれた金色のアウターバレルが顔を見せており、三つの首を持つ地獄の番犬の装飾とCERBERUSの刻印が刻まれている
「何これ」
メノウが注目したのは銃のコペンセンターのマズルガード部分に凶悪そうなスパイクが刻まれている
極めて攻撃的な形をした銃が沈黙しながらも絶大なる威圧感を放った
「こんな銃は見たことない」
メノウは呆然としながら呟いた
ブライドは銃を箱から取り出した
スライドを引きやすくするためのコッキングセレーションの刻まれた、磨き抜かれたアダマンチウム製のスライドが光沢を放つ
「銃の説明を頼む」
いいとも、フェイは頷いた
「ハデスと同じくモデルは『コルトM1911』の近代カスタムである『M2011』。近接戦闘用にスタンビライザーと一体型のストライクプレート・コンペンセンター搭載、マグチェンジがしやすいように大型マグウェルを採用。ハデスと同じく軽量化トリガー、リングハンマーを採用している」
「この『グリップ』の材質は象牙か?」
ブライドは白いグリップに指をさした
何かの牙で作成されたグリップは握りやすいようにトカゲの鱗のような滑り止めが加工されている
握り心地はチェッカリングされたウッドグリップよりも優しく、抜群によい
「希少な『ケルベロスの牙』で作っている。象牙より軽く、丈夫で、『対魔術性能』がある」
「『装弾数』は?」
「『21発』。ハデスと同じ9ミリパラベラム弾を採用。マガジンも互換性がある。もちろん、口径が合うならば爆裂弾、氷結弾などの魔術弾頭の使用もできる」
「『銃の名』を聞かせてもらおう」
「
なるほど、この攻撃的な形状とグリップに本物のケルベロスの牙を使ったこの銃の名前は『ケルベロス』に相応しい
「気に入った。さすがはフェイ=ユウリーと言ったところか」
「お褒めいただき感謝の極みだ。でも注意してくれ。その銃はハデスのように変形する魔銃ではない、あくまで近接戦闘特化の拳銃さ。そして、あの戦いで破損したハデスは、まだ、修理中。しばらくはその銃で任務についてもらいたい」
「ハデスの修理はあとどれくらいかかる?」
「なにしろ、材料的、技術的に難しい銃だ。あと一月は待ってほしい。それも材料が手に入るのが早くてだが」
「仕方がない。その間にケルベロスの試し撃ちを済ませることにするよ」
ブライドは部屋の隅に立っていり甲冑に向けてハデスを構えた。
さすがはフェイ=ユウリーだ
その銃、部品一つ一つが持ち主を考えられて作られ、磨き抜かれている
カンスミス『フェイ=ユウリー』の才能と技術、それを支える魂を込めた逸品だ
蛍光色の赤い
スライド、ハンマー、引き金の動きは良好
「最高だ」
感嘆の息を漏らす
早く、実際に、マガジンを入れて撃ってみたくなった
「よかったじゃないですか。ブライド。新しい銃もカッコいいですよ」
メノウは新しい銃を手に入れて嬉しそうなブライトにそう言った
「そうだろう。君の武器も頼んでおいた。フェイ、彼女に見せてやってほしい」
「え?」
ブライドの言葉にメノウは目を丸くする
フェイは壁に掛かっているショットガンと盾を下ろしてメノウに渡す
受け取った瞬間。これまで以上にずしっとした重みを腕に感じた
「『パレス・アテナmarkⅡ』銃身の下にある三つのチューブマガジンには5発ずつ、
「あはは、そうですかー。あは、まーくつー」
突然強化された武器を渡されてメノウは呆然とした
勝手に改造、新調したけど、一応、私の父の形見だったんですけど?
それと誰がタンク役(ゲームにおける敵の攻撃を引きつける役割のプレイヤー)だー!?
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