最強でもない。天才でもない。それでも、自身に与えられた役割を全うするため持てるものの全てを使って、戦わなければならない強大な相手に対峙する。
そういう泥臭いカッコよさこそがこの作品の最大の魅力だ。
主人公のフォル・クダンは戦争の最前線から帰還した元少年兵。帰る家も家族もなく、大した報奨金も与えられないまま放浪した彼は、都市国家ギンセイの城下町ギンセイ市に辿り着く。もはや持ち金は底をつき、生き延びるため強盗さえ決意したフォルは偶然にも街を守護する自警団『湖の蛇団』のジロに拾われる。
だがいくつもの自警団が林立するこの街で、『湖の蛇団』は弱小だ。そのせいで周囲からは舐められ、あるいは誰も受けたがらな危険な依頼ばかりが舞い込んでくる。自警団同士の縄張り争い、街の利権を巡る大物たちの権力闘争、時折現れる魔獣との死闘……フォルは仲間たちと共に、戦場とはまた違った「命を賭した戦い」に身を投じていく。
そんなフォルの魅力は、圧倒的な等身大さにある。彼は特別な才能も武器も持たない 。頼れるのは軍隊仕込みの喧嘩殺法と真面目さ、そして人より少し頑丈な身体だけだ 。 彼を突き動かすのは、自らの役割を全うしようとする無骨な誠実さだ 。十中八九勝てない魔獣相手にも「自分のミスだから」と棒切れ一本で立ち向かい 、自らの失態で仲間の誇りが傷つけられれば、全身ボロボロのまま敵のアジトへ単身殴り込む 。
最初はただ生きるために拾われたフォルが仲間と共に仕事に励む中で、自分の居場所と自分なりの正義を見つけていく姿は、絶対に応援したくなるはずだ。