第16話 相談②
「あの…友達のことがとても心配で…」
ともかがそう言うと、シャムコ先生は、目をゆっくり閉じたり開いたりしながら、ともかを見つめた。
話を続けなさいと言うことだろうか。
それから、ともかは、今までのことを話した。
あやながスマホを買ってもらってから、様子がおかしいこと。
学校では寝てばっかりで、何を聞いても生返事。
それまでは、積極的に授業に参加したり、みんなと遊んだり、本を読んだり、元気いっぱいな感じだったのに。
ついつい気になって、グループ学習の時に、あやながスマホを机の上に忘れていったタイミングで、つい、スマホの画面を見てしまったら、
れいか、っていう女の子の名前なんだけど、話してる内容が全然女の子じゃない感じの、
なんというか、どっちかと言うと気持ち悪い男の人…もっとはっきりと変態さんとか、そういう感じの雰囲気に私には見えた。
体のパーツの写真とかも送り合っているように思えた。
先生のダミーって言葉がすごく引っかかってて。
だから、それを、危ないよってあやなに言いたかったんだけど、
それを言う前にスマホを見たことで、あやな、キレちゃって。
そのまま夏休みに入っちゃって。
ラジオ体操とかで会えるかと思ったけど、全然ラジオ体操とかにも来なくて、プールとかで会えるかなと思ったけど、プールにも来なくて。
おうちの電話に電話したけど、電話も取ってくれなくて。
スマホの電話番号わからないし。
あやなが心配だし、今までみたいにあやなと仲良くしたい。
ともかは話をしながら、涙が止まらないことに気がついた。というか、気がついたら、泣いていた。
シャムコ先生は、そんなともかにティッシュを差し出した。ともかは涙を拭き、鼻をかみ、また涙を拭いた。
ともかが落ち着いた頃、シャムコ先生がゆっくりと言った。
「お友達はあやなちゃん、でしたっけ。とにかくお友達から目を離さないで。多分、その心配なスマホの中の人ね、夏休み中に絶対会おうって言ってくると思うの。そしたらあやなちゃんは必ず外に出るから。
これはお願いなんだけど、あなたはあやなちゃんをプールとラジオ体操には誘い続けて?
来ないだろうけど。誘い続けて欲しいの。
できればおうちに行ってドアをノックしてきて欲しい。出てこないだろうけど。
なんでかって言うとね、あなたが誘っても出てこないけど、多分誰が誘っても出てこないけど、そのチャットの相手が誘ったら出てくると思うからなの。
申し訳ないけど、探偵さんごっこして欲しいの。
もし見かけたら、後をつけて、どこに行くか、見守って。ところであなた、携帯電話とか持ってる?」
ともかはうなずいた。キッズケータイだけど、と言いながら、キッズケータイをシャムコ先生に見せた。
「よかった。警察に通報できる電話だったら何でも大丈夫よ。とにかく何かあったらすぐに警察に電話してちょうだい。親とか友達じゃなくて警察。110番に電話してください。」
シャムコ先生はそう言った。
ともかは、頷いた。
ともかがそろそろ帰ろう、代金を支払おうと財布を取り出そうとした時だった。
シャムコ先生が、突然天井を見上げた。
「急なんだけど、あなたのお友達そろそろ動く気がするの。もしかしたらそれは、今日なのかもしれない。」
シャムコ先生が言った。
じゃあ行かなくちゃと、ともかが言うと
「そうね。もういるかもしれない。駅あたりに。」
シャムコ先生がそういうので、ともかはペコリと頭を下げてお店を飛び出した。
飛び出していくともかを見送りながら、
シャムコ先生がつぶやいた。
「あの子、多分すごく霊感強い…。あと、何か守られてる感じもすごい。彼女なら何とかしてくれるでしょう。それと、お会計まだだけど、まぁいっか。」
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シャムコ 心の川柳
見せられない 写真は送っちゃ だめなのよ
あやなだけじゃなくて
みんなに言いたいな。
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