第40話:銀行、燃える
「ヤベェって! マジで燃えてるから!」
「サークラーダファミリーの構成員が!」
「ガチで報復したらしいぞ!」
紅茶を飲んで、そのまま銀行に戻ろうとした俺とルミナスは、そこで銀行の不穏について聞いた。周囲のザワザワを聞くに、銀行に火をつけられたらしい。手を出したのはサークラーダファミリー。その三下と見て間違いないだろう。どうやって火をつけたのかはわからないが、とりあえずは放っておけないのも事実で。
「おお、大火災」
メラメラ燃えている。とすると、だ。
「頭取!」
「逃げ遅れた人は?」
「数人ほど。炎があまりに強すぎて対応が難しいのです」
「消火作業は?」
「しております。軍も必死に作業してくれて」
「我が信仰を神に捧げ奉る! ウォーターウェイブ!」
バシャアッ! と大量の水が生まれて鎮火を促す。だがそれよりも炎の勢いが強い。
「…………消そうか?」
「あー大丈夫だ」
ルミナスの術式を借りるまでもない。
「じゃ、ちょっと外にいるんだぞ」
「…………ママを……待っている……」
「ども」
そういうわけで、俺は火災の中に入っていった。空気……というか酸素が足りない。一酸化炭素は結構多いな。受肉したとはいえ肺はあるので、呼吸をしないと生命には関わるが……。俺は剣印を結ぶ。
「梵我反転……
反転領域の展開。瞬間、銀行そのものが俺の胎蔵領域と化し、その中での温度がひっくり返った。熱がプラスからマイナスになる。そうして鎮火して逆に凍り付いた地獄の中で、俺は一人の男性を見る。サークラーダファミリーの構成員か。あの火の放ちようから、内部からの着火だとみて間違いない。鉄砲玉を放って放火。焼き殺して証拠隠滅ってところか? しかたない。
「生死反転」
俺は死という陰を生という陽に反転させた。ドクンと心臓が鳴り、生き返る。周囲を反転領域で知覚しているので、それらについても問題ない。生死反転は死体さえあれば可能だ。逃げ遅れたのが数人って話で、その内一人が鉄砲玉。客が二人と行員が一人。最後まで客を逃がすことに専念したのだろう。その心意気は褒め千切りたい。
「大丈夫か?」
鉄砲玉の顔をペチペチと叩いて、状況を促す。既に鎮火も済んでいるので、軍隊がワラワラ現れ、そうして銀行での火災について、記録、審判、その後の対応を研鑽する。もちろん俺は反転領域を維持したままだ。反転領域は、類感や接触を飛び越えて、領域内を理論上胎蔵にしてしまう。ほら。前に言っていた奴だ。伝死レンジ。呪いには適応させるのに距離が要り、最も術者と近い距離は胎蔵で、つまり自分を呪うのが一番簡単で強力なのだ。あとはそうすっと……。
「頭取。この度はサークラーダファミリーの悪意に対応できずすみませんでした。銀行の再設計は既に行っております。すぐにでも対応しますので少しだけ待っていてもらえませんか?」
「いや、かまわん。銀行の復元は俺がする」
「と、仰いますと?」
「言った通りだ。火が放たれたのは何分前だ?」
「一時間……長くても二時間くらいでしょうか?」
「じゃあそのくらいの時間だな」
そうして俺は反転領域内で時間の流れを巻き戻す。炎によって崩壊していった銀行がまるでフィルムを逆回しにして見る映像のような、逆再生の映像で修復されていく。
「おお」
「マジか」
「すげえ」
そうして炎の痕など無かったかのように、綺麗な銀行が戻ってきた。もちろん火を放った鉄砲玉にも話を聞かねばならないし。
「大丈夫か?」
俺が聞くと、鉄砲玉はハッとした。
「せっかく死を覚悟して仕事したってのに! 殺させてくれよ!」
「大丈夫だ。その内死にたくなるから。その時に死んでくれ。というわけで尋問よろしく」
俺はそういって軍隊に鉄砲玉を預ける。ドナドナを歌いながら連行されていく鉄砲玉氏。彼がこれから受ける拷問に関しては熾烈を極めるだろう。分かっていて生き返らせた俺も俺。
三時間もあれば、あっさりと銀行は元に戻った。そうして凄いだろうと偉ぶる気も無く。俺は一人ルミナスの元に戻る。
「財産は大丈夫ですか!?」
「預けた金を返してもらったり!」
「カードが空手形になったりは!?」
「しませんので安心してください。アーカーバンクはお客様の財産保護を全力で遂行する者でございます」
既にカードには金を記帳しているので、それがどうにかなるはずもなく。ついでに盤石さをアピールしておく。
「大丈夫ですよ。この程度で揺らぐ銀行でもないので」
「しかしだな。私たちも心配なのだよ。このまま銀行が潰れて、預かっている金を没収とか、そんな話にはならんのだね?」
「なりません。わたくしめらは常にお客様の財産保護を主目的に据えております」
さて、後はケガ人を治して。それから「…………きゃー……ママカッコいい」ってルミナスに褒めてもらうとしよう。
「ルミナス?」
反転領域を閉じて、安堵しつつ彼女を探すも。
「あら」
ルミナスが何処にもいない。というかかなり離れたところにいる。俺の小指から伸びている常時展開している糸状の反転領域が、ルミナスの小指に繋がっていて、俺たちは赤い糸のように糸状のフィールフィールドを互いに絡ませている。つまりどこにいるかはわかっているのだが、誰がルミナスを連れて行ったか。そこを考察すると大体わかるというか分からざるを得んというか。
「喧嘩売られてんなぁ」
だったら買うしかねえ。このビッグウェーブに。
「さて、じゃあ行きますか」
「頭取。銀行の対応ですけど」
「今日は止めとけ。人民も混乱してる。とにかく財産はすべて無事。カードは空手形にはならない。既に火は収まっており、死者はいない。それだけを強調して、明日からまた防犯意識を高めて銀行の再開……そんなところだろう」
「了解しました。ではその通りに」
「頼むな」
後は俺がフィールフィールドの糸を手繰って、ルミナスが何処に連れ去られたかを悟るだけでいい。こういう
「ま、急いではいないし」
結果、さらった奴が痛い目を見るだけだ。ついでにそれがサークラーダファミリーだったら尚よし。徹底的に叩き潰す口実が出来た。
「ルン♪」
俺の可愛い可愛いルミナスを誘拐したのだ。もちろん極刑。審判の予知も無ければ情状酌量の余地もない。ただ存在するだけで俺の死を受け入れるべき処刑方法を考えている。
「まったく。おバカさんなんだから」
俺に殺されると分かってこんな真似をしたのならまず間違いなく一級の馬鹿。命を放棄するというの生物上の欠陥だが、あるいは人間であることの証明かもしれない。とはいえだ。そのために死んでいいと思っている構成員とか鉄砲玉がどれくらいいるかという話で。
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