第41話:逆鱗


「…………」


 ツカツカと街路を歩く。俺は銀行の家事を鎮火して、そのままルミナスを追っていた。この煮えたぎる感情に一体何という名前を付ければいいのか。そこから迷っている有様で。


「ちょっ! お前……」


 訪れたのは裕福層の住む一角で。そこの屋敷の一つ。特に説明されなくても、そこがサークラーダファミリーの屋敷だと把握していた。もちろん玄関には護衛がいて、中に入ろうとする俺を止めにかかったが。


「触れるな」


「……?」


 掴みかかろうとした護衛の手を払うと、そのまま彼は死んだ。特に難しいことはしていない。接触の伝死レンジで、そのまま生を死に反転しただけだ。


 フィールフィールドの糸はこの奥に続いている。ちょっと地下寄りか。さて地下室への扉は何処にあるものか。


「ふむ」


 とりあえず屋敷内に入る。挨拶はしない。単に面倒なだけとも言う。屋敷と糸の関係から、心当たりというか、地下室への扉を捜しているのだが。


「テメッ! 何してやがる!」


 一人が俺を見つけてそう言い。そうして屋敷中の構成員が、わらわらと現れる。が、無視。俺はとにかく地下への階段を見つけたかった。


「無視してんじゃねえぞゴラァ!」


 腰を痛めているだろうに。無理して襲い掛かった三下は、だが俺に触れた瞬間に死んだ。


「「「「「???」」」」」


 意味が分からなかったのだろうが、俺は何も特別なことはしてない。単に殺しただけだ。


「なぁ」


 その集まってきた腰痛に悩まされている三下どもに、俺は聞く。


「地下室ってどこから入ればいいんだ?」


「不法侵入者なんかに教えるかよ!」


 さらに襲ってくる三下。ナイフを片手に立派なことだが、もちろんそれも通じない。俺がポンポンと肩を叩くと、意識を失って倒れ伏す。漸く相手が何なのか理解し始めたのだろうサークラーダファミリーの三下どもに俺は言う。


「いいから地下に捕らえているルミナスを引き渡せ。このままだと俺の機嫌はストップ安になるぞ」


「何言ってやがる……」


 そうか。ストップ安は通じんのか。


「貴様ッ! 我が屋敷に現れて! 殺される覚悟できてんだろうな!」


 さらにゴッドファーザーが現れる。こっちにルミナスを監禁しておいて、来るなと言われる方が心外だ。そりゃ助けにはくるだろうよ。


「全員! 撃て」


「「「「「我が信仰を神に捧げ奉る!」」」」」


 埋葬術の起動呪文。そして。


「フレアバズーカ!」

「ライトニング!」

「ウインドカッター!」

「アイスバレット!」

「ブラストブロウ!」


 立て続けに現象が起きる。


「くあ」


 欠伸を一つ。それらの多様な埋葬術が、だが俺には通じない。全て弾かれて終わりだ。


「ば……化け物!」


 失礼な言い草だ。


「おい。そこのお前」


 そして俺はニコッと笑って、一人の三下を指し示す。


「な、なんだ?」


「そこの頭目を撃て。そしたらお前だけは助けてやる」


「ッッッ!」


「出来なければ殺すだけだ。賢明な判断を期待する」


「し! しかし!」


「じゃあいいや」


 指定された三下はバタッと倒れる。それをおずおずと別の三下が把握する。


「し、死んでる……」


 それだけで屋敷中の人間がどよめいた。というかほぼ全員がこの場に集まっているのだが。


「次。お前な。ゴッドファーザーを撃て。そうしたらお前だけは助けてやる」


「ひ、やめ、お願いだぁ……」


 死亡。


「次、お前。ゴッドファーザーを撃て」


「その前にお前が死ね! 我が信仰を――」


 死亡。


 立て続けに三人死んだ。それだけで混乱することは必然で。


「次お前な。ゴッドファーザーを撃て」


「我が信仰を神に捧げ奉る! フレアバズーカ!」

「我が信仰を神に捧げ奉る! フォースシールド!」


 三下とゴッドファーザーの埋葬術が拮抗する。そうして攻撃が防御で防がれた。


「貴様、脅されたとはいえ親に攻撃をしたな?」


「すみませんすみません! だが俺は死にたくない!」


 この場合は三下が俺に殺されるか親に粛清されるかでしかない。もちろん俺にはどうでもいい。


「面倒だ。この場にいる全員。ゴッドファーザーに埋葬術を撃て。しなかった人間はまとめて殺す。慈悲は無いぞ。それはわかっているだろう?」


 俺がそう言うと、この場の人間が引きつった。俺の言っている意味を理解しているのだろう。そもそも欠伸混じりに人を殺しているのだ。それが自分に牙を剥かないとは到底思えないだろうし、実際にその通りでもある。


「「「「「我が信仰を神に捧げ奉る!」」」」」

「フレアバズーカ!」

「ライトニング!」

「ウインドカッター!」

「アイスバレット!」

「ブラストブロウ!」


 ことごとくがゴッドファーザーに反旗を翻した。


「貴様らぁ! 我と親子の盃を交わしておきながら! 裏切る気か! それでもマフィアの構成員か!」


「意味もなく死にたくない……なので死んでください! ファーザー!」


 ドゴォウン! ズガァァアアン! バシュウウゥゥ!


 埋葬術による殺し合いが始まった。特に意図していたわけでもないが、これでサークラーダファミリーは終わりだろう。ゴッドファーザーが死んで、そのまま解体されるまでがワンセンテンス。


「で? ルミナスは何処にいる?」


 俺は死にかけているゴッドファーザーに聞く。埋葬術は果たして何を消費しているのか。


「き……さま……こんなこと……して……」


「人を脅す余裕はあると見える」


 ヒトキリススキをエルフの能力で取り出し、そのまま剣のように斬りつける。


「が……あああぁぁあぁぁぁぁ!」


 斬撃が出血を呼び、そうして痛がるゴッドファーザー。


「言っとくが、今の俺は不機嫌だ。この屋敷が現存しているのは、あくまでルミナスが囚われているからという一点に尽きる」


「じゃったら返してほしければ……がああああああ!」


 さらに斬る。こっちに対してこざかしく交渉しようとする、その性根が気に入らない。


「ルミナスは何処だ?」


「教えるものかよ」


 そうか。


「よし。殺していいぞ。どうせ喋らないだろうし」


 俺はヒョイと三下どもに命令を下す。ビクリと震える三下。彼らにトドメを刺させるのが最も効率がいいだろう。腰を蹴ってもよかったが、それはあくまで最終手段。やめろ、とか、よせ、と非難しつつ、だが圧倒的な飽和攻撃によって頭目は三下どもに殺された。


 ちゃんちゃん。













※――――――――――――――※


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