第5話

悪魔っていうのは決して大袈裟ではない。


幼稚園の年少組の時、私の一番のお気に入りだったクマのぬいぐるみを泥まみれにしたあいつを、小学校に入学したばかりの頃、私の真新しいランドセルの中にミミズを入れたあいつを、悪魔以外になんと言えようか。


なのに、あいつに頼まれたからといって律儀に飲み物を買っている自分が嫌だ。


あいつが実は甘いものが大っ嫌いでジュースなんて飲まないからって、ブラックコーヒーを買っている自分が本当に嫌になる。



ブラックコーヒー片手に生徒会室のドアをノックすると、奴が扉を開いた。


「花凛ちゃんありがとう。さぁさ、中に入って」


満面の笑みでそう言って、私の腕を引っ張る壱悟。


「壱悟、ちょっと待って」


壱悟は私のそんな言葉には耳を貸さず、その可愛らしい顔に似合わず強い力でぐいぐい引っ張っていく。


私が生徒会室に入ると、壱悟は扉を閉めて私の腕を放した。

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