第4話
「お、噂をすればってやつだね」
私を背後から呼ぶ声の主に気付いた奈美が、「先行ってるね」と言って去って行った。
「あ、奈美待って……」
そんな私の言葉は奈美に届かず空しく消え、代わりにあいつの透き通るような声があたりに響き渡る。
無駄に長い廊下の真ん中にぽつんとひとり取り残された私と、私に向かって走ってくるあいつ、壱悟。
私のもとにたどり着く頃には、壱悟は息を切らしていた。
「花凛ちゃん」
「なに?」
乱れた息を整えながら、奴は言った。
「僕さっきの集会でのど乾いちゃったから、ジュース買ってきてもらえるかな」
「なんで私が」
「ねぇ、お願い」
ふわふわの天然パーマに、クルリとした愛らしい瞳で天使みたいな顔をした壱悟にそんなことを言われたら、選択肢なんてあってないようなもの。
......だけど、
「それなら、あんなに叫んで走らなければいいでしょ」
私は絶対に騙されない。
壱悟は天使なんかじゃない。
「チッ。いいからさっさと買ってこい」
舌打ちをして私を睨みつける彼は、天使の皮を被った悪魔だ。
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