第2話

第4章 奇妙な師弟関係


こうして、沙耶香と田中悪魔の奇妙な関係が始まった。


「で、何をお望みですか? 他人を操る魔術でしたっけ?」


「うん、クラスの男子に好かれたいの。特に吉沢君」


「なるほど、恋愛系ですね。得意分野です。でも最近のコンプライアンス的に、完全に操るのはまずいので、『好感度アップ魔術』程度にしておきましょう」


「え? 黒魔術なのに、控えめじゃない!?」


「大丈夫です。私、600年の経験がありますから。それに、自然な感じの方が長続きしますよ」


田中悪魔は、まるで就活の面接のように熱心に説明を始めた。


「まず、相手の好みをリサーチして、さりげなく共通点を見つけるんです。これは基本中の基本ですね」


「それって、普通の恋愛テクニックじゃない?」


「魔術の基本は、実は人間関係の基本と同じなんです。これ、私の持論なんですけど……」


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第5章 予想外の展開


翌日、学校で田中悪魔のアドバイス通りに行動した沙耶香。確かに、クラスメイトの男子、特に吉沢君との会話が弾むようになった。


「田中さん、すごいじゃない!」


「でしょう? 600年の経験は伊達じゃありませんよ。あ、それと、もうちょっと分かりやすく履歴書に書けるような実績も作らせてもらって……」


そんな時、沙耶香の友達の美月が相談を持ちかけてきた。


「沙耶香、なんか最近すごくモテてない!? 何かコツでもあんの?」


「えっと……」


沙耶香は田中悪魔に相談した。


「友達にも魔術を教えてほしいって言われたんだけど……」


「それは素晴らしい! 顧客拡大ですね。私の再就職活動にも有利になります」


こうして、田中悪魔の「人生相談サービス」は、沙耶香の友達の間で密かに広がっていった。


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第6章 崩れ落ちる日常


数ヶ月後、沙耶香の周りは田中悪魔の「人生相談サービス」に依存する友人で溢れていた。最初は軽い相談だったはずが、次第に友人たちは自力で問題を解決しようとせず、何かあればすぐに沙耶香を通じて田中悪魔に頼るようになっていた。


吉沢君との関係も、田中悪魔のアドバイス通りに進んだ結果、確かに親密にはなった。しかし、それは沙耶香自身の魅力で引き寄せたものなのか、それとも田中悪魔の「魔術」の効果なのか、沙耶香には分からなくなっていた。彼の好意が、まるでプログラムされたかのように感じられ、どこか空虚な感覚が残った。


そして、ある日。


「沙耶香! ねえ、どうにかしてよ! 私、テストで赤点取っちゃったの! 田中さんに頼んで、先生に点数上げてもらえる魔術とかないの?」


「沙耶香、俺、部活のレギュラーになれないんだ。田中さんに頼んで、監督に俺を使ってもらうようにお願いできないかな?」


友人たちの要求はエスカレートし、本来の「黒魔術」とはかけ離れた、現実離れした内容ばかりになった。沙耶香は板挟みになり、精神的に疲弊していった。


田中悪魔も、当初は再就職の実績作りと喜んでいたが、度重なる無茶な要求と、それに伴う地獄からのクレーム対応に追われるようになった。彼は悪魔としての本来の業務を怠り、次第に地獄での立場も危うくなっていった。


「沙耶香さん、すみませんが、これ以上は無理です。私の再就職どころか、悪魔としてのクビがかかっています!」

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