第2話 浄霊師

霊体『天草あまくさ 柚月ゆずき』の除霊を開始。



「止まれ。威嚇なしでドタマぶち抜くぞ」


身体中の激痛を耐えながら倒れた柚月ゆずきを庇うようにして莉瑚りこが立ち上がった。


銃口を向けられながらも浄霊師じょうれいし 大国おおくに 竺紫つくしは不敵な笑みを浮かべながら莉瑚、いや除霊対象である霊体へ歩みを進める。


「やめとけ。今のお前じゃ話になんねぇよ」


「やってみなきゃ分かんねぇだろ」


大国はピタッと足を止めると

自分の額をトントンと指し笑う。


「よ〜く狙えよ」


「くたばれ、バーカ!」


躊躇なく引き金を引くと青白い霊力の塊が銃口から超音速で大国の頭目掛け飛び出した。


見事に着弾したかと思ったその瞬間

霊力の塊が何かに弾かれ消し飛んだ。


「満足したならそこをどけ。仕事の邪魔だ」


「こいつに触れたきゃウチを殺してからにしやがれ」


「おいおい、勘弁してくれよ。お前ぶっ殺せば除霊師界からまたゴチャゴチャ言われんだろうが。それに俺らの隊は人手不足。お前みたいな小娘だろうが失うわけにはいかねぇ。分かったならそこをどいてくれ」


「こいつは命の恩人だ。だからどうか今だけは見逃してやってくれ!こいつはただの高校生なんだよ」


「莉瑚、お前は何の為に除霊師やってんだ?

霊体を祓うためだろ。そいつはもう普通の人間じゃない。俺たち除霊師の敵だ」


「敵じゃねぇ!敵じゃねぇんだよ!なぁ、頼むあんた浄霊師だろ。偉いんだろ!なんとかなんねぇのか」


「はぁぁ……。もういいか、二人とも殺すか」


ボソッと呟くとポケットに手を突っ込んだまま、莉瑚の顔を蹴り飛ばす。


吹き飛ばされる莉瑚。


歪む視界の中にそいつは居た。


再び目を開くと目の前には莉瑚を吹き飛ばした大国が佇んでいる。


そして、その後ろからそいつがやってくる。


晴模様はれもよう:旭日きょくじつ


凄まじい霊力に即座に反応するもその速さには対応できず大国はまともに柚月の技を受けてしまう。


真正面から柚月の刀を受けたはずの大国の体にはあるはずのものがない。


「危ねぇな。誰だお前」


スッと腹についた砂を払うと首をならしストレッチを始めた。


「無傷か…。面白い、楽しませろ除霊師」


目の前の男。

柚月の頭、体、髪、顔、目、指、爪をしているが莉瑚と大国は言いようのない違和感を感じていた。


「柚月…なのか?」


「莉瑚、ここを動くな。仕事の時間だ」


天烏あまがらすかみなりだ!」


「クカァ!天気は雷!」


「降霊術師か?」


降霊術こうれいじゅつーーーー


術者と契約を果たした霊を霊界より召喚する術。

術者とは主従関係で結ばれているため、術者の思い通りに命令することができる。


雷模様かみなりもよう:遠雷えんらい


波状のような雷が大国を襲う。


息つく間もなく襲いかかる雷に目を奪われ肝心なそいつから一瞬目を離したその刹那奴は大国の懐に現れた。


雨模様あめもよう:時雨しぐれ


水を纏う刀を大国の腹から肩に切り上げる。


不意な攻撃に顔が少し歪むも笑みを浮かべ柚月の体に蹴りを入れ後ろへ吹き飛ばす。


「貴様が硬いのか。この体がまだ我に馴染めていないのか。だが、まだ楽しめそうだな」


興奮を隠しきれない柚月に取り憑く霊体。


その前に立つは除霊師界最高戦力の一人

浄霊師 大国 竺紫。


ここで大国がこの戦いの速度ギアを上げる。


「降霊術ってのはお前の専売特許じゃねぇぞ」


ガシャ…ガシャ…とどこからともなく骨が軋むような音が聞こえてくる。


「降霊術ーー『餓者髑髏がしゃどくろ


姿を現したのは暗い紫に光る巨大な骸骨だった。




















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