第6話

ドクドクと跳ね上がる心臓。



ハァハァと息を吐き出す。



靴を履いて無いせいか足裏が痛い。



何か鋭利なモノを踏んだのか、ズキズキと鋭い痛みに顔を歪めながら足元を見ると、点々と斑点がアスファルトに模様を作っていた。



辺りが暗く夜の為、目立たないその模様を視界で捉えながら角を曲がった。



そして死角に身を潜めるとジッと息を殺した。



すると、何秒か後に数名の足音と話し声が近付いて来る。



その音が近づく度、心臓が跳ね上がり、胸の前で拳を握り込むも不安が拭えない。



ドクドクと脈打つ胸を抑えながら瞳をギュッと閉じる。




「マジやべぇよ...何処行った?」



「おい、傷は付けんなよ、殺されっからな」



「あークソ、こぇぇからな、ツルギさん!今来てんのか?」




悪魔の名前が出た所でビクッと大きく上下した肩



そもそもどうしてこうなった?



私が何したって言うんだろう。



ああ、そうか、この世に生を受けた事自体、間違いだったんだ。



言われてたじゃないか



『お前なんて産まれなければ良かった』と。



『この疫病神が!』って。




ごめんね....砦っ...私っ...



近くに有った足音と話し声が徐々に遠ざかる。



ホッと胸を撫で下ろし、瞼をユックリ引き上げる。



私は足音と話し声が完全に消えたのを確認するとソロリと顔を少し出し、




一気に飛び出した。





ここで、私がもう少し隠れてたら。




後、数秒遅かったら。




もう少し慎重になってたら。




後悔しても......もう遅い。





後ろから低い低い...悪魔の声が聞こえて来た。




「....いい度胸だな?」




その声は今一番、聴きたくない声だった。



震える足を動かさなければと、思うも足は動いてくれず




振り向く事も出来ない。




砦、砦、砦っ!と、何回も呼ぶも此処に居る筈も無く、声に出す事も出来なくて、唇を噛み締めると血の味がした。



グッと掴まれた肩が上下した。




「やっ、アダヤダヤダっ!


砦、砦砦砦砦...助けてっ」




肩を持たれた瞬間、咄嗟に腕を振り拒絶する私。



そして、タブーを口にしてしまった私を奈落の底へ落とす言葉を呟いた悪魔が



心底怖い...




「監禁決定....自由はもう無いと思え」




とり..で...助けてっ

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