第33話 れーちゃんがあやしいよっ!
あたしがズイッと詰め寄ると、れーちゃんは目をパチパチさせてから、
「んー、知ってる、というか……読んだことがある?」
そう言って首を傾げた。それから、
「うさぎのソフィーちゃんがいて、この学園の名前がワールドエンドミスティアカデミーなんだよね? そして、ここは特別寮の食堂……うん、たぶん」
「どーゆーこと?」
「私もびっくりしてるんだよ。夏休みに入る前に、学校の図書室にいる司書の先生が紹介してくれた本の中に同じ名前があったの。二つの鏡合わせの世界の狭間にある学園、その名前がワールドエンドミスティアカデミー。その学園に通うことになった主人公と、箱庭に捕われたお姫様の物語。確かタイトルが……」
「やあ、いらっしゃい。無事にお友達と一緒に来られたみたいだね。ようこそ、君が詩雛くんの大親友のれーちゃんだね?」
いつの間にか学園長さんが来ていて、突然後ろから声をかけられた。
「うわ、びっくりした! あ、学園長さんお邪魔しています。れーちゃんも来られるようにしてくれてありがとうございます。れーちゃん、この学園の学園長さんだよ」
「あ、は、はじめまして。
れーちゃんが立ち上がってぴょこんとお辞儀をした後、目をキラッキラに輝かせて学園長さんに見とれている。うんうん、学園長さんイケメンだもんねー。
と、その時、学園長さんがにっこり笑いながられーちゃんの耳に顔を寄せると、小さい声で何か話している。れーちゃんがハッとしたように目を大きくして、それからコクコクと頷いた。
「それじゃあ詩雛くん、怜奈くん、帰りは送ってあげるから僕の部屋まで来るんだよ。ソフィーくんが張り切っておやつを作っていたみたいだから楽しんでね」
「「ありがとうございます」」
学園長が出ていくのと同じくらいに、ソフィーちゃんが厨房から出てきた。透明な器に、紫、黄色、黄緑、ほんのりピンク色と、色とりどりの氷が載っている。
「うわー、すごく綺麗ーっ! これ、何?」
── 見ているだけで口の中によだれが出てくるよっ。
ソフィーちゃんが嬉しそうに言った。
「うふふ、これシャーベットよ。いろんな果物で作ってみたの。溶けないうちに食べてね」
「いっただきまーす」
「いただきます」
シャクッという音と一緒にシャーベットをすくうと、口の中でふわーっと氷が溶ける。それと同時にフルーツの味と香りが口の中に広がっていく。マンゴー、メロン、ぶどう、これは桃かな? オレンジに……。
「……おいしい」
れーちゃんも幸せそうな顔で一口一口、味わって食べている。
「よかった。たくさん食べると体が冷えちゃうから今日はおかわりなしだけど、料理長さんがたっくさんフルーツを用意してくれたから、明日はシロップにしてかき氷を作ってみようと思ってるの。しーちゃん、れーちゃん、明日も来てくれる?」
「もっちろんだよ! うわぁ、嬉しいな。明日もソフィーちゃんに会えるんだね!」
「うん。しばらく学園にいるから、毎日会えると思うよ」
「すごいっ! たっのしみー!」
あたしが盛り上がっていると、れーちゃんが心配そうに言った。
「しーちゃん、これから毎日ここにって、発掘のお手伝いはどうするの? それに、今日はいきなり連れて来られちゃったけど、長い間留守にしていたらみんなに心配かけちゃうよ?」
「ふ、ふーん。心配ご無用っ! 学園長にお願いすれば全然平気なんだなーこれが。だって、ここ、『異世界』だもん」
ドヤ顔で言うと、白い目で見られた。
── なんでー?
「れーちゃん、おやつを食べ終わったら、学園を案内するね」
「え? いいの?」
「ふ、ふ、ふ。あたしとソフィーちゃんにまっかせなさーい!」
「……うん、思いっきり不安になってきたよ」
そう言ってれーちゃんは苦笑いした。
── 失礼だよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます