第34話 れーちゃんと一緒に探検だー!

「よーし。じゃあ探検にしゅっぱーつ!」


 特別寮を出たあたしたちは、仲良く手をつないで歩き出した。ソフィーちゃんを真ん中に左側があたし、右側がれーちゃんだ。れーちゃんはソフィーちゃんと手を繋いだ時、


「すごい、ふわふわであったかーい。ソ、ソフィーちゃんと手を繋げるなんて!」


 なんか変な感動してたけど、とりあえず放置した。本当は走って移動したいけど、三人で手を繋いだままそれをやるとさすがのあたしでも危険だってわかるから、ここは我慢だよね。それにソフィーちゃんに会うのも久しぶりだから、こうやってゆっくり歩くのも楽しいよね。


 特別寮を出て階段を降りると一階へ。外へ出ると中庭が広がっていて少し先に噴水がある。


「ここが中庭よ」

「あの噴水のところに東屋があるんだ。すぐ側にソフィーちゃんの花壇があるんだよ」


 説明しながら東屋まで歩く。ソフィーちゃんの花壇には今はミニヒマワリが並んで咲いていた。東屋に近い方はコスモスの種が植えられていて、まだ葉っぱが並んでいるだけ。


「ここがわたしのお世話している花壇よ。ここにはしーちゃんにもらったコスモスっていう花を植えているの。前はチューリップを植えていたのよ。いろんな色の花が咲いてとってもきれいだったの。チューリップもしーちゃんに教えてもらって植えたのよ」

「そうなの? ねえしーちゃん、一体いつから学園に来てるの?」

「ん? えーと、ソフィーちゃんとアプリで話すようになったのが四年生になってすぐくらい? ここに来たのはゴールデンウィークが最初だね」

「そんなに前から来てるの? ……んー、でもそんな話あったっけ?」

「何、本の話? それ、聞きたい!」

「えっと、今はちょっと……」

「本の話? れーちゃんは本が好きなの?」


 ソフィーちゃんが首をかしげながられーちゃんに聞いた。


 ── ソフィーちゃん、かわいいよっ!


 れーちゃんはちょっとびっくりしたみたいな顔をして答えた。


「え? うん、読書は好きかな」

「そうなのね。それじゃあ言乃花さんとお話が合いそうね」

「言乃花お姉ちゃんはまた迷宮図書館にいるのかな?」

「迷宮図書館! やっぱりあるんだ。見渡す限り周りが本なんだよね?」


 ── あっ、れーちゃんの目がキラキラしてきたよ!


「そうよ。すごくたくさん本があるの。でも、中が迷路みたいになってるから勝手に入ると迷子になってしまうわよ」

「すごい。そんなにたくさんの本……」


 そう言うとれーちゃんは手を組んで、空を見上げたまま動かなくなった。


 ── うん、そうなる気はしてたよっ! 


 うっとりとした表情を浮かべて幸せそうだけど、ソフィーちゃんはとってもびっくりしたみたい。


「れーちゃん、大丈夫? 気分が悪くなっちゃったの?」


 心配そうに声をかけるけど、れーちゃんはピクリとも動かない。


 ── あーあ、ここは一発げしっと行きたいところだけど、またソフィーちゃんがビックリしちゃうよね……しかたない。


 あたしは軽くため息を吐いてから、れーちゃんの両肩をガシッと掴んで言った。


「れーちゃん、残念だけど今は読めないよ。言ったでしょ、ここは異世界だって。あたしたち、ここの文字読めないよ」

「え? そうなのーーーー!?」


 れーちゃんの絶叫がこだました。


「ちょっと、れーちゃん。ソフィーちゃんがびっくりしてるよ」

「あ、ごめんなさい。でも、私たち普通に会話出来てる、よね?」

「うん。よくわかんないんだけど、あたしたちとソフィーちゃんたちの言葉は違うみたいなんだ。よく見るとね、口の動きが違ってるんだって。会話が通じるのは何かのスキルなのかな? ソフィーちゃん、わかる?」


 けれどもソフィーちゃんは首を振った。


「ううん、わたしにはよくわからないわ。でも、おしゃべりできてるよね。ふふ、不思議ね」


 そう言うとソフィーちゃんはクスクス笑った。あたしも、


「難しいことはわかんないけど、通じてるからいいんじゃない?」


 と言うと、れーちゃんはしばらく考えこんでから首を振って言った。


「……ここ、異世界だものね。こういうの、異世界あるあるなのかもしれないね」

「考えてもわかんないんだから仕方ないよー。よし、じゃあ探検を続けますか」


 あたしたちは東屋を出発して、迷宮図書館へ向かった。

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