第32話 二人で転移しちゃうよ!

「ゲートポジショニングセット、特別寮前」


 目の前に突然現れた大きな鏡にれーちゃんがびっくりして固まっている。


 ── ふ、ふ、ふ、予想通りだねっ。このまま連れて行っちゃうよ! 


 れーちゃんの腕をつかむと、


「え、え、ちょっと? これ、どうなってるの?」


 パニクっているのをそのまま無視して、勢いをつけて鏡の中へ飛び込む。


「えーーー!」


 トンネルの中にれーちゃんの叫び声がこだましている。


 ── 面白いよ! 


 笑うのをがまんしてそのまま一気に駆け抜ける。



 ── ぽいっ。



「はい、無事到着っと。おっと、忘れずに消さないとね。ディメンションズゲート、クローズド」


 鏡を消すと、れーちゃんの絶叫がこだました。


「ここ、どこーーーーーー!?」


 想像していたので耳を塞いでやりすごしてから、


「ふ、ふ、ふ。ここはね、なんと! 異世界だよ!」


 胸を張って言うと、れーちゃんがガシッとあたしの腕をつかんで、


「ちょっと、どうなってるの? わたしたち転移したってこと? え? 何、いきなりファンタジーの世界? え? えーっ?」


 ── ……あー、かなりパニクってるねー。よし、とりあえず。


「れーちゃん落ち着いて。とりあえず深呼吸しようか、はい、大きく吸ってーー、はい、吐いてーー」


 何度か深呼吸してれーちゃんが落ち着いたところで、


「えっへん。ここはね、ワールドエンドミスティアカデミーっていう異世界にある学園なんだ。なんと、ソフィーちゃんはここにいる生きて動いてる本物のうさぎのお人形なんだよ!」

「え? ワールドエンドミスティアカデミー? うさぎの人形?……それってもしかして……まさかね?」

「ん? れーちゃん、何か知ってるの?」

「うーん。まさかそんなことあるわけないし……ハッ、でも異世界転移しちゃってるんだよね!? だったら……」


 れーちゃんが何かぶつぶつ言ってる間に、ガチャリと音がして特別寮の扉が開いた。ヒョコッと顔を出したのはソフィーちゃんだ。


 ── んー、相変わらずかっわいーっ!


「あ、やっぱりしーちゃんだ。いらっしゃい、しーちゃん。それからあなたがれーちゃんね? はじめまして、ソフィーです」


 そう言ってソフィーちゃんがペコリとれーちゃんにお辞儀をした。れーちゃんはソフィーちゃんをじーっと見ていたけれど、慌てて同じように頭を下げる。


「あ、あの、はじめまして。守川もりかわ 怜奈れなです。よろしくお願いします」


 ソフィーちゃんが嬉しそうに耳をピクピクと動かしている。


「来てくれてうれしいな。学園にようこそ。こちらへどうぞ」


 にっこり笑ってあたしたちを寮の食堂へ案内してくれた。


「ここが食堂……」


 ── あっ! れーちゃんの目がキラキラして細くなってる! ヤバい、これは妄想注意だ。 


 食堂に入った途端にれーちゃんの足が止まった。


 ── でも、なんで? ただの食堂だよ? 感動するようなものって特には見当たらないはずなんだけどなー……。 


 ── だって、一番ビックリするのってソフィーちゃんを見たときだと思うんだよね。なのに、れーちゃんはビックリはしてたけどあたしが想像してたほどじゃない。普通なら、「え? 人形がしゃべってる?」ってそこからでしょう?


 ── あやしい! れーちゃん、あやしいよ!


 れーちゃんは完全に妄想モードに突入して入口から動かない。ソフィーちゃんは食堂に着くと、


「好きな席に座って待っててね」


 と言って厨房におやつを取りに入っていった。


 ── とりあえず、れーちゃんを引き戻そう。話はそれからだ。


 げしっ。


「あいたっ!」


 あたしは肘をれーちゃんの背中に直撃させてれーちゃんの意識を引き戻すと、ズリズリ引っ張って手近な椅子に問答無用で座らせる。あたしも隣の席に座わると、ジトッと睨みつけた。


「れーちゃん、さっさと白状して。何を知ってるの? ソフィーちゃんのこと、知ってるよね?」




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