第39話:英雄候補(5)
『鋼の翼』の面々がギルドからの聴取を終えたのは、日が完全に暮れる頃だった。
ギルドの通常業務は既に終え、都市も一部の店を除いて静まり返っている。
結果として、ヴィルのイレギュラーに対しての安易な行動を咎められ、彼の冒険者資格は一時剥奪。
ギルドから講習を課され、その後の試験に合格するまでは迷宮都市から出る事もダンジョン探索などの冒険者としての活動も禁止となった。
クレス曰く、クラス能力だけは優秀な為、ギルドからの恩情だという。
しかしリーダーの期限が定まらない謹慎に伴い英雄候補パーティ『鋼の翼』は実質的に解散となったのだった。
今は、ギルドの業務が立て込んでいるので、しばらくは大人しく宿で謹慎していろとの事だった。
メンバーの誰もが言葉を発せずに居る中、シャルロットはいつもの調子で軽く手を上げた。
「それじゃ、私これで抜けるねー」
「……は、はぁ!? 何言ってんのよこんな時に! 笑えない冗談やめてよ!」
「やだなー、冗談なんかじゃないよー。それに元々、『抜けたくなったらいつでも抜けて良い』って話だったじゃない」
ミリンダが声を荒げるがシャルロットはヘラヘラと笑う。
確かにシャルロットは元々、魔物の討伐依頼を合同で受けた冒険者だった。彼女の強さにヴィルがパーティに誘い、その条件での加入だったとミリンダは思い出す。
そして、シャルロットは軽薄な物言いが多いが、嘘だけはついた事は無いのだと。
「ヴィルくんの謹慎もいつ終わるかも分かんないし、別に構わないでしょ?」
「――あぁ、好きにすると良い」
「良かったー。それじゃ、またどこかで会ったらお酒でも飲もうよー」
彼の返事にシャルロットは特に感傷に浸る様子も無く、笑いながら去って行く。
「ちょ、ちょっと……ヴィル、良いの?」
「構わないよ。君達も好きにすると良い」
ヴィルは虚空を見つめながらそれだけ言うと、引き留めるミリンダとライラの声が聞こえない様に、夜の街に消えて行った。
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