きっと夏のせい

言葉(ことは)

第1話 夏の匂い

夏の匂いがした。


全てがどうでもよくなってただあてもなく彷徨っていただけの僕にも確かに感じられるほど夏の存在は確かに感じられた。


それと同時に、ほんの少しだけ、気が楽になった。


一人じゃないんだって、そう思えた気がしたから。


夏の匂いに誘われて、ふと顔を上げると、満点の星空が広がっていた。

「ほんと、どうでもよかったんだ」


僕は、自分で勝手にたくさんのものを抱えていただけだった。


考えれば考えるほど、重くのしかかるたくさんのものを

その時僕は、抱えていた全てのものを捨てて

考えるのも、やめた。


何もない畦道に横たわり、大きく深呼吸をした。


かつてないほど心地よく、清々しい心地になれた。


目の前に広がる星々に手が届くような気がしてそっと手を伸ばす。


「流石に届かないか」


静かに微笑み、目を閉じた。


「何してるの?」


突如聞こえた声に思わず目を開くと

女の子が首を傾げて寝転がっている私を見下ろしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きっと夏のせい 言葉(ことは) @saemon243

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る