第33話 敗北ッ! 圧倒的敗北……ッ!

「ふぅ……」


 頬をパンッと叩いて集中する。

 意識してやっているあたしのルーティンだ。


 ステージは船の中。

 1on1でルールは先に3回キルした方が勝ち。


 味方がいない=如実に実力差が勝敗に出てしまうが、圧倒的勝利を目指してるあたしからすると上等でしかない。ぶち殺してやるぜ。


 かつてないほど闘志を高めてコントローラーを握るあたしだが、ふと「あれ? さっきなんかやべぇ約束取り付けなかったっけ?」という考えが頭をよぎる。


 ……いや、勝てば良い話だし最悪負けても口約束くらい反故にすりゃ良いだろ、とクズの思考で己を納得させた。今は勝負だけに集中しろあたし。


 さてさてレヴィはどこにいるのか。

 あたしは慎重に船の中を移動する。


 FPSプレイヤーのセオリーと言うものは幾つか存在する。

 あたし自身が詳しくないから軽いことしか知らないが、ガンガン攻めながらサーチ&デストロイするタイプ……まァ、これはあたしだな。

 そしてレヴィは芋りながら(隠れながら)向かってきた相手に銃弾を叩き込む陰キャタイプだ。


 これに関してはあっちに分があるとしか言いようがねぇけど、隠れる場所なら限られているし遮蔽物に素早く移動しながら、相手の隠れている位置に当たりを付けて撃ちゃなんとかなるだろ。


 と思いながら少し拓けた場所に出た瞬間──


 ──どこからともなくやってきた銃弾があたしの頭を貫いた。


『You died』


「はァ!?!? 早すぎるんだろ!!!」


 あたし以上の反射神経とエイム……ッ!!

 姿現してから1秒も経ってねぇぞ!? イカれてんだろうが!!! ってか1on1で芋スナはズルいだろ!!!


 文句があたしの頭の中で生成され、ふとレヴィの方に顔を向けると、相変わらず無表情のままピースサインをしていた。


「ぶい。ワタシはあそこから動かないよ」

「な、舐めやがってぇ……」


 スナイパーが自ら隠れ場所を晒し、そこから動かないとは随分舐めた真似してくれるじゃねぇかよォ……!!

 良いぜ、望み通りそのドタマに蜂の巣開けてやる……!!


 相手の使用武器はスナイパーライフル。

 あたしはアサルトライフル。


 距離の面ではレヴィに分があるが、もうすでに隠れている場所は明らかになっている。

 銃弾が飛んできた位置を予想しつつ、隠れ場所に回り道しながら行けば被弾せずにヤツの懐に行くこともできるはずだ。


 ハッ、どうしてもスナイパーライフルは近距離だと撃つまでに時間がかかる!!

 スコープで狙いを定めて撃ち放つ。

 この動作がある時点で、ほぼノーモーションで何発も撃てるアサルトライフルには敵いやしねぇ。


「待ってろよゴミめ……」


 あたしは急ぎながら船の中を駆け回る。

 あの位置からヘッドショットを狙えるとしたら、上階の客席の窓からのはず。

 そんな分かりやすい場所にいるか? と思ったが、あの舐めプを見る限り敢えて分かりやすい場所にいる可能性も十分にあるだろう。


 あたしは屈辱で身を悶えながら、恐らくレヴィがいるだろう部屋の外で武器を構えていた。


 そして身を踊り出してアサルトライフルを構えた瞬間──


 ──またもあたしの頭に風穴が空いた。


『You died』


「ハァぁぁぁ!?!?」

「ぶいぶい」


 ふざっけんなよぉぉぉお!!!!

 こんな、こんなことあってたまるかァ!! 


 アイツがいる部屋の侵入経路は二つある!!

 一つは窓の外のベランダから窓ガラスを割って入る経路と、あたしのように普通に部屋の外から入る経路だ!!


 窓の外の経路も、隣の部屋のベランダから近づいて行けば気づかれにくいし、大体はそこから入ってくると予想するはず。

 だが敢えてあたしは部屋の外から入った。

 警戒は窓の外の方が強いと思ったから。


 だけど結果はまたも一瞬でのヘッドショット。

 あの速度は人間業じゃねぇよ……!!


「いや待てあたし。工夫が足りなかったんだ工夫が」


 落ち着け落ち着け。

 勝負事においてヒートアップしたら大体負けるんだよな、ソースはあたし。だからこそ落ち着く必要がある。


 ああくそ、FPSプレイヤーがいつもキレ散らかしてる理由が何となくわかるぜまったく……。

 今回は素直に入室したが、しゃがみながら入るだとかジャンプしながら入るだとか工夫の仕方はある。


 そりゃ真正面から走りながら入ったらヘッドショットもしやすいだろうよ。これはあたしのミスだ。

 だからこそ今回も敢えて部屋の外から入り、ジャンプで射線をズラシながらやってやる。



 ──今回こそ貰ったぞレヴィ!!!



『You died』



「あぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」


 こうしてあたしは惨敗したのであった。

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