三題噺「遊園地」「蟹」「ツインテール」

 母がやたらと上機嫌で化粧をしていた。

「——どこいくの?」

「いいところよ」


 妙に はぐらかすではないか。

 娘としては、その正体を突き止める義務がある。


「私も行くわ」


 母は、ジロリとこちらを見た。

「あんた、暇なだけでしょ。来てもいいけど、会費がいるわよ」

「いくら?」

「八千円」


 ——う。

 なかなかのお値段。

 

「——で、行く?」

「行く」


 連れてこられたのは、食堂だった。

 母と同年代の女性が多く、おばちゃん連中という言葉がふさわしい。

 ツインテールなんてしてるのは、私ぐらいだった。


 ドンと目の前に置かれる鍋。

 キョロキョロと辺りを見回すが、みんな楽しそう。

 店員さんが蓋を開けると、果たして中には蟹が入っていた。

 

「これこれ♪」

「——ここが良いところ?」

「そうよ」

「もっと楽しいところだと思ってた」

「何言ってるのよ。蟹を食べる。それが大人の遊園地ってもんよ」


 母の言い分は、イマイチ納得いくものではなかったが、蟹は美味しかった。

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三題噺参加用紙 五來 小真 @doug-bobson

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