第三話 「コペルニクスさんと うごくほし」

そのひ、コンは ぼーっと そらをみていました。

そらには くもが ゆっくりと うごいていて、

なんだか そらじゅうが

くるくると まわってるように みえました。


おそらさん、ぼくのいる ほしって……

いま、まわってるの?


かぜが くるくるっと ふいて──

まるで こんのまわりを

おどるように かけぬけました。

くすぐったくて コンは えへへっと わらいました。


──そして。

コンのまえに ふしぎな おじいさんが たっていました。

てには まるいちきゅうの

ちいさなもけいを もっていて、

くるくると ゆびで まわしています。


「こんにちは、コンくん。

わたしは、ニコラウス・コペルニクスと いいます。」


おじいさんは ながいローブを

ひらひらと ゆらしながら、

コンのとなりに すわりました。

 

目はきらきらとしていて

でも すこしふかくて、

ほしを ずっとみつめてきたひとの まなざしでした。


「こんくんがいる このほし──“ちきゅう”はね、

ほんとうに いまも、

ぐるんぐるんと まわってるんだよ。」


こんは びっくりして 目をまるくしました。


えっ!? いまも? この下で? ほんとうに?


コペルニクスさんは うなずいて、

そらをゆびさしながら いいました。


「でもね おそらは とてもおおきいから、

そのまわってる かんじは

なかなか わからないんだ。

 

だって、ちきゅうじたいが──

“のっているメリーゴーランド”みたいなものだからね。


そのことばをきいたコンは、

そっと じめんにてをついて、

あしをぴたっと とめてみました。

──でも なにも うごいてないきがします。


……ほんとうに? ぼく まわってるの、

ぜんぜん わかんないや。


コペルニクスさんは やさしく ほほえみながら、

手のひらにのせた ちきゅうの模型を


そっとまわしました。


「コンくんが はしってても、

ねころんでても、

おやつをたべてても──

ちきゅうは ずーっと

やさしく まわってるんだよ。」


かぜがまた くるくるっと ふいて、

くさのはが かすかに ささやきました。

 

まるで 「そうだよ」って いっているように。


「みえなくても、かんじなくても──

せかいは ちゃんと うごいてる。

コンくんが なにかを しらなくても、

ちきゅうは そのあしもとで、


やさしく まわりつづけてるんだ。


そういって コペルニクスさんは そらにむかって

おおきく まるを えがきました。


コンは あっけにとられたかおで

しばらく そらをみていましたが、

やがて にこっと わらいました。


じゃあ──

ぼくも うごいてるんだね。

ぼくが なんにも してなくても、

このほしと いっしょに まわってるんだ!


そういいながら、コンは りょうてをひろげて、

そらにむかって ぐるぐると まわってみました。

くさのにおいと やさしいかぜが、

くるくると からだを すべっていきます。


なんだか……

 

このほしに だっこされてるみたいだ。


コペルニクスさんは

コンのうしろすがたを みながら、

そっと うなずいて、

もういちど ちいさな

ちきゅうを くるりと


まわしました。

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