第4話 勇者と召喚部と謝罪の菓子折り
ドラゴン素材入り鍋の後始末を終えた翌日、僕、ナゲキ・ルイは、錬金術部の問題を謝罪するため、幻想生物召喚研究会の部室を訪れていた。
「本当に申し訳ありませんでした、これ、謝罪の菓子折りです……」
そう言って差し出した箱の中身は、昨晩のドラゴン鍋の残り、つまりドラゴン肉だ。いや、部長の指示とはいえ、これを菓子折りにするのはどう考えてもおかしい。
「ふん!盗み出した召喚陣で呼び出した竜の肉とは反省の色が見えぬな!」
そう叫んだのは、幻想生物召喚研究部の部長、サーモン・ファンタ。金髪に尖った耳のエルフで、名前のせいで一部から『シャケソーダ』や『シャケファンタ』とあだ名をつけられた悲しい人物だ。
「ま、待ってください! 僕はただの謝罪役で──」
「黙れ、貴様はあの魔王(錬金術研究部の部長)の配下なのだろう!」
その瞬間、部室の奥から眩い光が放たれ、一人の青年が現れた。
「私はサーモン殿の召喚に応じ異世界より呼び出された勇者、アステリオス・ディケー! 貴様ら悪の錬金術部、成敗してくれる!」
「ちょっと待て! 話せば分かる!」
「問答無用!」
勇者アステリオスが構えるのは、黄金に輝く聖剣。対する僕も、部長に持たされた聖剣(レプリカ)を握りしめる。
「エクスッ! カリバーァァァ!!」
「エクスッ! カリバーァァァ!!」
まさかの同時発動。互いの剣が火花を散らし、教室は戦場と化した。
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
数分間の激しい斬り合いの最中、僕の必死の説得と、互いの剣が同じような聖剣であることに勇者が気付く。
「貴君、悪ではないのか?」
「違いますよ!僕は悪逆非道な部長に振り舞われた 被害者の一人です。嘆かわしいことですよまったく……」
こうして、誤解は解けた。
勇者アステリオス・ディケーはサーモン・ファンタと契約し、しばらくこの学園に留まることとなったのだった。
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