火の色の水【カクヨム短歌賞10首連作部門】

小野楓

火の色の水

ピンクムーンにバッハの音は溶ける 出会ってしまったから 春雷


初夏の午後 ロイヤルホストをながれてる水があなたを照らせばよかった


星々がカリスマ的に翳る秋、道ばたの落ち葉をひろってみせた


「そんな目で俺を見るな」 セブンティーン 冬の東京は透過して 「見て」


血、それは火の色の水、あたたかい あたたかすぎてひとりになれない


アスファルトに落ちているぬいぐるみの寸前にみた景色は美術


きみが望む君臨に失敗したぼくの加害的ノスタルジア


しあわせは数と本能 パーティーの切符は飲めない牛乳と酒


はじまりの火のように鼻をすすった レクイエムにこだまして鈴


ドーナツ。Hell’s Picture Scroll。存在のまるみを許そうと。瞑る。


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