6機目

「すまない。流石にリーンカーネーションでもそこまでは分からない。全ての行方不明者を把握していないからね。もう君の顔に似ている人は調べているんだ。」


僕は恐る恐る元宮に質問してみる。


「あ、あの。あなた達は何者なんですか?」

「わたし達かい?そうだね、一言でいえばレジスタンス。今全てのヴァーニマエの生産開発を行い、年頃の少女達を拉致監禁及び実験している特殊機関、世界特殊機械機構、WSMOの解体及びヴァーニマエとなった少女たちの保護ヘルスケアを目的とした団体さ。1年前のあの日、世界で初めてヴァーニマエが戦闘に投入された映像がWSMOから世界に発信された日からわたし達は活動している。兵器とは何か?戦争とは何か?答えはまだ出ていない。だが少なくとも今言えることは、少女を連れ去り、洗脳し教育し、兵器として利用するWSMOはなくならなければならない。実際一部の国ではもうヴァーニマエの実戦配備が計画されている。彼らはその正体を知らない。それにもし、知ったとしてもその国の国民には正体なんて教えないだろう。無理やり戦わされている少女が国防の要という事を。だから君たち2人にも、この活動に加わってほしい。全てのヴァーニマエの少女たちが普通に暮らせるようにするために。」


元宮は深々と頭を下げた。


「頭を下げないでください。本宮さん。僕は初めから柚のために行動すると決めている。さっきの話を聞く限りグベルニーターってのはヴァーニマエの操縦者なんだろ?僕にだけできることがあるなら協力するよ。」


僕は即答で元宮の提案を受け入れた。彼もありがとうと言って固い握手をかわした。

「わたしは…いいのですか?」


「そうだね。本来だったら、柚君も他の保護したヴァーニマエと同じような状態にしようと思ったんだけど、君は他とは違う気がしたんだ。君、奴らの洗脳教育ほとんど受けてないよね?」

「やっぱり見抜いていたわね。そうよ。だからわたしはここにいる。元宮さん、あなたがいいというならわたしも戦う。他の子たちも救いたい。あんなものこの世にあったらいけないんです!」

「ありがとう。二人とも。君たちがいればより多くの少女を救いだせる。そして約束しよう。柚君。この活動の果てに、君を普通の少女に戻すことを。これもまた、わたし達の使命だからね。今、全力で研究中なんだ。最後に、これからどうしていくかはまた明日決めよう。詳しいこともそこで伝えるよ。」


そう言って、元宮は僕と柚の首の拘束具を外してくれた。


「今日は疲れているだろう。しっかりと休め。部屋は用意した。」


席を立ち、また仕事に戻ろうとする元宮を引き留めるように僕は尋ねる。


「あ、あの。もしかして、僕はもう普通の日常には戻れない感じですか?」

「そうだよ。君はWSMOに命を狙われる存在だからね。今ならまだ何とか逃げられるかもしれないけど?」

「いえ、そんなことはしません。もう覚悟は決めましたから。」

「そうかい。それなら彼女も喜ぶだろう。」

「なんで?柚が喜ぶんですか?」

「まだ、言っていなかったね。ヴァーニマエにとってグベルニーターは運命の相手だよ。多分彼女もそれぐらいは知っているはずだよ。」

「え?!」


後ろを振り向くが、柚はいなかった。もう部屋に行ってしまったらしい。


「詳しい話は新しい学校の仲間から聞くといい。」


え、新しい学校?あっけに取られていると、近くに控えていた人が部屋に案内しますと言ってきた。

その日は怒涛の展開が起きすぎて、疲れていたのだろう。非常によく眠れた。

明日何が教えられるのかなんて考えられないほどには。



(同建物内会議室)

「…というわけだ。まだ、欧州本部には報告するな。奴らはきっと今回の対応例を認めない。柚君と琉翔君を守るためにも、このことは日本支部だけの話にするぞ。いいな。」


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