第25話 「身体強化」レクチャー開始⑤

 「さてお次は「精霊力」での「身体強化じゃが」

 引き続きグルヴェイグ大師匠にご指導いただく。

 「さっきと感覚は似とる。良い意味でも悪い意味でも。」


 あー。言いたいことは分かる。


 「普通はの、さっきの「魔力強化」状態でやるんじゃ。しっかり区別するためにな。「闘気強化」できとる奴はそっちでも良い。要するに「精霊強化」は「身体強化」の中でも少し「距離感」的な難しさがある。

 とはいえ、お主確かこっちも自力修得しとったよな?」


 テヘペロ。


 「・・全く大した奴だ。

 では始めるか。まずはイメージ。精霊力を纏う。」

 言うやグルヴェイグ大師匠との距離感がズレる。昨日経験しておいて良かった。俺も一緒に発動する。

 すぐに自分の外側にしっかりとしたマントを羽織った感覚になる。同時に「レイ」がこちらを見て微笑む。「勇者」に助力できることは純粋に喜びらしい。

 ん?グルヴェイグ大師匠は少し赤味掛かった男性が見える。髪の毛は焔の様だ。


 「お主は光の精霊か。良き精霊の助力を得とるのぉ。」

 グルヴェイグ大師匠にもこちらの様子が見えているようだ。

 「ここからは精霊との繋がりを保ちながら共に力を高めよ。互いにより強く存在を意識せよ。紡ぎ出し纏うのだ。どのような嵐も防ぐ外套を、例えドラゴンのブレスだろうと防ぎ切る不可視のローブを。」

 グルヴェイグ大師匠が導いてくれる。


 「勇者よ」

 「レイ」が語りかけてくる。

 「あなたのために尽くしましょう。不可視の盾で、不可視の布で貴方を守り、貴方の力を高めましょう。私を信じ、私を意識してください。それだけで、貴方が私の存在を強く意識してくださるだけで、私は力を尽くせる!」

 !これが「レイ」の力。これが精霊との繋がり。これが精霊力の真髄か!

 「「レイ」ありがとう。また一つ理解が深くなった。今だけじゃなく、いつもそこにいてくれるんだな。ありがとう精霊たち。ありがとう「レイ」。共に高みを目指そう!」


 ヴヴゥゥンンッ

 自分の周囲に意図的に動かせるエネルギーフィールドを纏っているのが分かる。

 同時に、自分の周囲の空間が唸っているように感じる。


 「うむ。予想通りこちらも強化に成功したようじゃの。ではワシが直接その出来を確かめてやろう。」

 グルヴェイグ大師匠が魔力も高め始める。


 「今から「魔力弾」でそなたを打つ。

 ただし絶対に躱すな。受けるなり弾くなりして・・・」


 手に強い魔力が集まる!


 「全て凌いでみせよ!」


 魔力弾の雨が飛んでくる!

 言われた通り、初撃は正面から受け止める!


 バチィィィッ!!


 光と音が迸る!

 エフェクトこそ派手だがダメージは無い。


 今のは掌で馬鹿正直に受け止めすぎたな、と考えた俺は、正面に意識を集中して高めた力で「盾」を創り出すイメージを強く持つ!

 「承知しました。勇者よ。」

 呼応するレイの声が聞こえる。目の前にも透明な光る輪郭を持つ盾が「見える」!

 魔力弾は盾に当たると、

 ババッババババツッバババッ!っと、

 先程掌で受けた時よりも、傘に当たる大きな雨粒のような音を立てて全て遮られる!


 盾を迂回するように誘導された魔力弾は、今度は手の甲に力の配分を意識して方向を変えるように逸らす!


 「・・・戦闘のセンスが良いのはカムイランケとの手合わせで理解できていたが、よもやこれほどとはの・・・。

 初撃こそ馬鹿正直に受け止めたが、あれも確認したというところか?全く小癪な奴じゃ。」

 褒め呆れが板についてきたグルヴェイグ大師匠。

 あざす!


 「精霊強化も文句無しの合格じゃ。力添えしてくれる光の精霊を大切にするんじゃぞ。」



ーーーーーーーーーー



 一度昼休憩ということで、「ミラジェ」のお食事処に戻って来た。

 基本的に「勇者と導き手のための街」なのだが、全面的なサポートを可能にするためにかなりの人数が働いてくれており、潤沢な運営資金も相まってかなり住人は多く、結構普通の街なのだ。

 そんなわけで、お食事処も純粋に勇者専用では無い。勇者と関係者はというだけだ。

 辛い修行と、怖い戦いに行く前にせめてお腹いっぱい食べてね精神である。


 「お主、ちいと大きゅうなっとりゃせんか?」

 カムイランケ大師匠が俺を見て言う。

 そうなのかな?ま、成長期だからなー。ここんとこ色々な意味で成長著しいし。


 「あれだけの力を扱うには身体は強く大きい方が良い。遠慮せず食べるが良いぞよ。」

 グルヴェイグ大師匠がなんか身内のばあちゃんみたいな言い回しで言う。


 ちなみに、カンヌさんとミコさんは街周辺を定期巡回する役割で今日は一日不在だ。街はこんな風に色々な人の力で運営されている。あざす。



ーーーーーーーーーー



 「さて、腹ごしらえも終わったところで。最後は「闘気」での「身体強化」じゃな。」

 ここはカムイランケ大師匠の出番となった。


 早速大師匠の周囲が陽炎のように歪む。俺も既に「チャクラ」を開け閉めできるので、同様に「闘気」で身体を満たす。


 「実はの、「闘気」による「身体強化」はの、どれだけ「チャクラ」を意識できて、どれだけ早く強く生命エネルギーを体内で循環させられるかにかかっとる。感覚が違う領域のことを悪戯に引き合いに出すものじゃないんじゃが、「魔力相撲」とやってることは近い。」


 昨日「闘気」に目覚めてカムイランケ大師匠の言ってることが手に取るように分かる。


 「ん?もしかしてお主、できてしまうのか?」

 大師匠が驚きつつ半分予想していたかのような言い方で聞いてくる。


 「ククククッ。遠慮は要らんて。お主の力、見せてみよ!」


 ふぅっ。

 深い集中前のいつものルーティンで浅く息を吐く。

 ここから一気に意識を集中する!

 チャクラ全開放!

 吹き荒れるような生命エネルギーを、前回「闘気」に目覚めてハッキリと意識下に置けるようになったチャクラに、前回の「留める」イメージから、一歩押し進めてチャクラを水車の様なイメージで捉えて勢いよく「回す」ように練り上げ、更に7つのチャクラで加速させるように巡らす!


 ウオォォオオンッ!!


 迸りつつも無駄無くチャクラを巡り、強烈なエネルギーを纏っていることが目でも確認できる。


 「クククク、ウッフッフ、アーッハッハッハッハ!!」

 カムイランケ大師匠大爆笑。

 「お主という奴は・・・。わしゃこの時代に師としてお主の目覚めに立ち会えて、本当に満足じゃ。」


 力を試すまでも無かった。

 絶対に強いから。疑いようが無いくらい。


 そして。

 これで「三領域同時発動」の準備が整った。

 でも、直ぐには試さない。

 てか、


 直感的にそう思ったのもあるけど。

 ミコさんもカンヌさんも留守だしね。


 大師匠も同じ思いだったようで、

 「「三領域同時発動」は何が起こるか予想がつかん。全員揃った万全の体制で挑もうぞ!」


 いやっべ!ここ最近でもテンションMAXだ!


 3000年ぶりの再現達成か、それとも失敗か。


 さて、どうなる?


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