第23話 「身体強化」レクチャー開始③
「まずはそれぞれの領域別に「身体強化」の特性を理解するとしよう。」
カムイランケ大師匠が説明してくれる。
ちなみに一息ついていた食事処から出て、一度宿に入って部屋を押さえ荷物を預けている。
「修行場」に着いて直ぐに色々始まったが、今日はもう少し修行することになったので、また街の外のさっきの岩場まで戻ってきていた。
が、カンヌさんもミコさんも嫌な顔ひとつしないで、寧ろ嬉々として付き合ってくれている。
なんだかんだで弟子が壁を破るところが見たいのかな?
「それぞれ戦闘時のレベルまで出力を上げるぞよ。どう変化するかよう感じとるのじゃぞ。
まずは「闘気」。」
カムイランケ大師匠はさして意識をした様子も見せない。
だが、圧倒的な気配が放たれる!
同時に、大師匠の輪郭が陽炎のように揺らいでいる!
「この「闘気」はの、体の内側を巡るエネルギーじゃ。まぁ、鍛えた者でなければワシの様に見た目にすらわかる様にはならんがの。」
一旦大師匠は「闘気」を解く。
「お次は「精霊力」。」
言うなり、さっきとは違って大師匠との距離感がおかしくなる。見た目と気配の大きさが合わない感じだ。
「他人の精霊力とはこんな感じじゃ。お主は既に「精霊力」とお次の「魔力」は自分が纏う感覚は既に掴んでおるから、説明は不要じゃろ。」
「最後に、「魔力」じゃな。」
また、言うなり気配が変わる!
「同時発動が一瞬でもできる以上、ワシもこの通り、戦闘レベルで使える。」
「精霊力」を使っている時と気配の強さは変わらないが、印象は、より身体の輪郭に沿ったシャープな感じだ。確かに、自分が使っている感覚と人の力を感じ取るのは違うな。これはこれで貴重な経験だ。
大師匠が魔力を平常時のレベルに戻す。
「さて、今のはワシがそれぞれの領域を戦闘レベルに高めただけで、「身体強化」としては何もしていない。ここからが本題じゃ。
まずは「闘気」による身体強化を見せる。
よく観察するが良い。
「闘気」は体の内側にあるエネルギーと言うたが、それ故「身体強化」では、「肉体の強度を圧倒的に高める。」ことが可能になる。
相手の攻撃が外側からの圧力とするなら、それに負けない力の方向をイメージせよ。体の内側から、攻撃を跳ね返す鎧が生まれるようなイメージを。
それができると、こんなことが可能になる。
カンヌ。」
呼ばれてカンヌ師匠は、躊躇なくカムイランケ大師匠に一抱え以上の、かなりの大きさの岩をフルスイングで投げつける!
ゴガァァアアンンッ!!
岩が相当のスピードで大師匠にぶつかり砕ける。
ただ、音が変だ。
大師匠が蹴りで砕いた時と違って、鉄でできた何かにぶつかって砕けたような音。
そうだ。まるで鎧に石をぶつけた時のような・・・
岩が砕けて散った後には平然と立つ大師匠。
全く動かず受けたのか。あの岩を。
「変な音したじゃろ?ワシ自身が岩なんかものともしないくらい「硬く」なっとったからの。
それに、自ら動けばこんな感じになる。カンヌ、構えよ。」
と言うや否や、一気にカンヌ師匠との距離を詰め、手刀での一撃を見舞う!
受けるカンヌ師匠は、嘘だろ?剣で!
ギイィィンッッ!金属同士のぶつかる音が響く!
金属同士!?大師匠暗器でも握ってんのか?
ギィンッ!ギンッ!ギィンッ!ギィンッ!
・・・いや、大師匠は間違いなく素手だ。素手で剣と打ち合ってる・・・
数度打ち合ってお互いに距離を取る。
「とまあ、こんな感じじゃの。全身が鎧になり武器になるわけじゃ。加えてぇ・・ドォウッ!」
声を置き去りにしてカムイランケ大師匠の姿が霞む!
かろうじて視界の端で何かを捉えて咄嗟に振り向く!
もうその時には、目の前にカムイランケ大師匠の拳が寸止めされていた。
「脚力腕力は10倍ほど強うなる。
たかが一つ「身体強化」修めただけでもこうなる。
どうじゃ?できそうか?」
ハハッ、スゲェ!
絶対身につける!
まずは「闘気」を理解しなけりゃな。
例の輪を作る。
「(R!「闘気」について教えて欲しい!)」
Rが即応する。
「(かしこまりましたマスター。ご許可頂ければ、一瞬、マスターの「チャクラ」を刺激いたしますがいかがでしょうか?)」
「(そんなことできるようになったの?てか「チャクラ」?何それ?どこかで聞いたことあるような気がするけど・・)」
「(はい。最近のマスターは一気に成長されております。それに合わせた機能拡張を上から指示されておりますのでご安心を。まだあまり直接的なサポートではございませんが、今回は形而上学的な面と言うよりは、形而下学的な面でのサポートですので、機能拡張の範囲内です。ご安心を。
マスターの感覚的に分かりやすく申し上げれば、「魔力」同様、「闘気」も自らの中に経路がございます。そして、「闘気」の根幹は自らが普段意識してコントロールしきれていない生命エネルギー。「チャクラ」とは、その要となる7つのポイントです。)」
「(なら任せる。やってくれR。少しでも早く大師匠たちに限界を超えるところを見せてあげたい!)」
「(承知いたしました。チャクラを刺激すると、「魔力」で経験されたのと同じく、普段は制御していないエネルギーを目にすることができるようになります。所謂、「チャクラが開かれた」状態になります。マスター相手に釈迦に説法ですが、一応一言アドバイス差し上げれば前回と同じ要領です。準備はよろしいですか?」)」
「(大丈夫だ。頼む!)」
「(承知いたしました。参ります。)」
意識の中でのRとのやり取りがまとまるのと同時に、視界が一瞬ぼやけたかと思うと、次の瞬間には全身から湯気のように何かが立ち上っているのが視えるようになった!
これが「闘気」!俺の生命エネルギー!
「(マスター、今は普段無意識下では無駄遣いを避けるためほぼ閉じている「チャクラ」を、強制的に半分ほど開いた状態を作っています。直ぐに枯渇はいたしませんが、コントロールせずにいると、およそ3時間程で全て放出仕切って疲労のため立っていられなくなります。お気をつけを。)」
「(了解だR!任せろ!)」例の輪で通話を閉じ、闘気のコントロールに集中する。
だが、Rの的確なアドバイスで、「前回と同じ」感覚は直ぐに理解できた。
「自然体」でエネルギーが強く留まっている「チャクラ」の位置を意識下に捉える。垂れ流し状態で無秩序に拡散しようとするエネルギーを纏うようなイメージから、己の中に再度取り込んで、チャクラの位置に留めて練り上げ、巡らすようにイメージする!
「できた・・・!」
「な・・んと、いう・・・!」
流石のカムイランケ大師匠も瞠目している。
「さっすがトールちゃん♡最早なんでもありね!」
ミコさんはあっけらかんだ。
「クックック。長生きはしてみるもんだねぇ。なかなか刺激的な坊やだよ。」
とグルヴェイグ大師匠。
「やれやれ。こりゃいつまで「師匠」呼びさせるか考えものだな。」とカンヌ師匠。
これで「魔力」、「精霊力」、「闘気」の初歩は会得できた。
次は「三領域同時発動」の成功を目指す!
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