第22話 「身体強化」レクチャー開始②
「「身体強化」には三種類あるのは分かったと思うけど」
ミコさんが続ける。
「「魔力」、「精霊力」、「闘気」の三つ全ての強化を同時に使いこなせる人は、今のところいないわ。」
え?え?どういうことですか?
大師匠は?
その大師匠お二人が答える。
「ワシ(カムイランケ大師匠)は「闘気」と「精霊力」を併用できるの。どうにも「魔力」の強化を他の強化と併用するのが苦手での。」
「ワシ(グルヴェイグ大師匠)は「魔力」と「精霊力」じゃ。「闘気」に満ちてるようには見えんじゃろ?正直「闘気」と他の強化との併用は苦手じゃの。」
なんか納得。
「私はグルヴェイグ師匠と同じ。カンヌさんは」ミコさんも答えて、カンヌさんに振ると、「私は「闘気」と「精霊力」だ。魔力強化の修得はできたが、他の強化との併用には至れなかった。」と答える。
今の会話だけだと基準が分からないが、明確に得手不得手があるようだ。
すると、俺は「魔力」と「精霊力」はすぐに理解できたから、グルヴェイグ大師匠とミコさんと同じってことっすか?
「トールちゃんが「魔力」と「精霊力」をあっという間にものにした後、私直ぐにカンヌさんに相談したの。
前例から言えば、トールちゃんは私と同じ感覚の持ち主である可能性が高く、「闘気」の「身体強化」は苦手な道理でしょ?
でもね、トールちゃんの「魔力」と「精霊力」の修得スピードがあまりにも異常だったから、さっき話してた「未解明の身体強化」に届き得る気がして。「闘気」のことと「身体強化」のことは、予定を早めてでもカムイランケ師匠とグルヴェイグ師匠のお二人に相談すべきだって。」
話を受けてカンヌさんも言う。
「相談されたとき、私も同じことを思ったんだ。勘って言われればそれまでだけど、なんか君、規格外な感じだったから。
だから、僕が「闘気」における「身体強化」を会得しているにも関わらず君には示唆すらしなかった。三領域全修得の可能性に賭けたかったから、自分以上の練度をもつカムイランケ師匠にお願いしようと考えたんだ。」
「そもそも。」
ここまでを受けてカムイランケ大師匠が語る。
「「身体強化」の三領域はどれか一つでも爆発的に強くはなるが、ワシらのようにもう一系統加えると、単純に掛け算的に強くなる。もう一系統加えられるなら手がつけられん強さになるのはハッキリしとる。実は、ワシもグルヴェイグも、一瞬だけなら三系統同時発動ができるからの。」
ん?「一瞬だけなら」?
今度はグルヴェイグ大師匠が言う。
「動くことができん。三領域同時発動を維持することに全て使い切ってしまう。発動して終いじゃ。
ワシらも意地になってな。そりゃ色々やったのよ。でもどうにもならんかった。
正直言って、原因が分からんかった。
で、ここに来てお主という特異点が現れた。
ここで考えてみたい。
ワシらに無くて、お主が持っているものは何じゃ?
ちなみに、「勇者」のご指名を受けているかどうかは関係無いぞよ。既に過去が物語っておる。」
・・・。
即座に分かってしまった。
額の「石」だ。
気づいて確信する。
即座に右手で例の輪を作る。
「(お呼びですかマスター?)」
頭の中でクリアに聞こえる。
「(確認したい。俺は闘気を扱えるか?もう少し突っ込んで言えば、「三領域同時発動」の成功に至ることができるのか?)」
Rに問う。返答やいかに?
「(まず一つ目のご質問について回答致しますれば、はい扱うことができます。二つ目の質問について回答致しますれば・・・)」
頼む。できてくれ。祈る様な気持ちになる。
「(はい。三領域同時発動、更には重複させて戦闘力を大幅に上げることが可能です)。」
よーしっ!よしっ!
この事実はものすごくでかい!
ついでに検証する。
「(R、それが可能なのは額の「石」のお陰か?)」
Rに問うてみる。
「(はい。概ねその考え方で間違っておりません。)」
ん?「概ね間違ってない」ってどう言う意味だ?
「(R、今「概ね間違ってない」って答えてくれたけど、今の会話のどこかに齟齬があるのかい?)」
Rに問うと、
「(初めてこの科白をマスターに返す気がしますね。残念ながら制限下にある情報となり示唆する言い回し含め回答できません。)」
ほほう。「制限下にある情報となり回答できません」とな。逆説的に「ご指摘の点に、より核心に近い情報が含まれてますよ」って言ってもらってるも同じだな。Rはできるオペレーターだよ。
「(了解だ。今ので十分なサポートだよ、R。また頼む。)」
Rに礼を言う。
「(勿体無いお言葉です。マスター。くれぐれもご無理なさいません様。)」
気を遣わせちゃったか。ありがとうR。
もう一度右手で「例の輪」を作って会話を終える。
そして、検証十分の回答を、カムイランケ大師匠に答える。
「・・・この額にある「石」ですか?」
カムイランケ大師匠がニヤッと笑う。
「ご明察じゃ。おそらくお主は、手に入れ至るはずじゃ。
そして、ワシらが感覚だけしか届かない、動くことすら叶わなかった世界で、自在に動き、強大な力を操れるはずじゃ。」
掌を開いて見つめる。
やるべきことがどんどん明確になっていく。
自分の成長を実感しながら。
こんなにも偉大な先輩たちが、試行錯誤してくれた全てを、惜しげもなく注いでくれる最良の環境で。
その全てを一ミリも無駄にしない。
その決意を込めて掌を強く握りしめた。
「カムイランケ大師匠、グルヴェイグ大師匠、早速教えてください。すぐにでも修行しましょう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます