第51話 コロッセオ

 カグヤがデスしてしまったことに対して、自分のせいだとテンションが下がってしまい、ゲームを続けられる元気を失ってしまったため、一度ログアウトして、咲良と電話をしていた。


『そっか、でもそこまで責任を感じる必要はないよ』


「そうなんだけどさぁ、気持ち的にちょっとね」


『うーん、そのカグヤって子のことを想うなら、そうやって責任を感じているよりも、一緒に強くなろうって励ますためにも、テンションを保っていた方がいいんじゃない?』


「確かにそうかも! 勉強中なのに、愚痴を聞いてくれてありがと!」


『全然気にしないでよ、私たちの仲なんだからさ。それにゲームの話を聞けてリフレッシュできたから、また勉強を頑張れそうだよ』


 咲良の励ましによって、テンションが戻って来た美咲は、再びNLOの世界にログインした。


「……サキお姉さん、おかえりなさい」


「ごめんね、アリウム。もう私が……私のせいで……なんて言わないよ!」


「テンションが戻ってよかったです!」


「それじゃあ、カグヤが戻ってくるまでの間、軽く街の散策をしようか」


「はい!」


 サキたちは大通りを目指して進んで行く。

 彼女たちは広すぎる王都に苦戦していた。


「うーん、露店街で迷子になって、そこから下水道をグルグル回ったせいで、現在地が一切分からないなぁ」


「ここは居住区らしいので、コロッセオがある商業区を目指しましょう」


 王都は商業区、工業区、居住区、冒険区、そしてその4つの区に囲われた、王城を中心に貴族の居住地が主な中央街からなる。

 現在サキたちは居住区に居ることが分かっており、コロッセオがある商業区を目指しているのだが、居住区があまりに広く、中々抜け出せなかった。


「居住区って呼ばれるくらいに、住居が乱雑に建っていて、全然まっすぐに進めないよぉ」


「でも着実に商業区に近付いていますから、頑張りましょう!」


 幽霊であり、建物を通り抜けることができるアリウムが先導して、案内をしてくれているおかげで、着実に商業区へと近付くことができていた。


「それにしても、こんなに広いと、移動だけで一苦労だよね」


「そうですか? 私はそこまで苦に感じないですよ」


「アリウムは幽霊だから、移動で疲労を感じないからじゃない?」


「確かに動き回っても、一切疲労は感じないです!」


「まあ私も移動程度で疲労は感じないけどね」


 サキが張り合うように疲れないことを伝えた。すると幼い見た目のアリウムが我が子を見るような視線で、サキのことを見ていた。


「何その目!?」


「いえ、何でもないです!」


 2人は楽し気に、商業区を目指して歩いて行った。


 そして十数分歩き続けると、やっと居住区と商業区の境目に辿り着いた。

 商業区は居住区を遥かに超える活気を感じられ、そこがマケトニア王国の経済の中心地と言っても過言ではなかった。

 その活気に人混みが苦手なサキは、若干の吐き気を覚えつつ、それでもコロッセオを目指すために歩みを再開した。


「もう少しでイベントが始まるけど、どんな人がいるのか楽しみだよ」


「頑張ってください、私は参加できないので、応援しています!」


「うん、参加するからには優勝目指して頑張るから、応援しててね」


「はい!」


 サキたちは活気溢れる商業区を進んで行き、ようやく第1回イベントが開催されるコロッセオに辿り着くことができた。

 コロッセオは名前の通り、イタリアのローマにあるコロッセオに似た円形闘技場となっているが、魔法や飛び道具から観客を守るための結界が張られていたり、舞台は魔法によって創り出された森林が広がっている。


「これがイベントの舞台かぁ……」


「かなり大きいですね……サキお姉さんはここで戦うんですよね」


 2人はしみじみとコロッセオを見つめていた。

 

「頑張るから、アリウムも、カグヤも見ていてね」


「はい!」


「当然頼光もね!」


『……』


 召喚していないので、聞こえるはずがないのだが、サキの耳には頼光が笑ったような音が聞こえていた。


――あとがき――

 tips

・王都

マケトニアの王都は商業区、工業区、居住区、冒険区は、それぞれ法服貴族が区長として派遣されているが、商業区と冒険区は、それぞれ商人、冒険者の権力が強くなっている。


・コロッセオ

王都に位置する円形闘技場。

運営が神と名乗って創り上げた物であるため、観客のために張られた結界はどんな攻撃でも防ぎ、舞台はどんな攻撃でも破壊されない不壊の効果を持っている。

第1回イベント終了後も、コロッセオでは王国主催の闘技大会が定期的に開かれる予定となっている。


・頼光

楽しめそうな事柄が起きていないため、召喚されることを拒否している。しかし未召喚時のテイムモンスターは同一空間にいるため、頼光とアリウム、カグヤの顔合わせは済んでいる。


・テイムモンスター

未召喚時のテイムモンスターは、テイム主の視点を共有して見ることができる。

ホームを所有していると、デスペナルティー時でもホーム限定で召喚することができる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る