『夏物語「乱」と「休」』

田波 霞一

『夏物語「乱」と「休」』

【1〜5首:文月・「乱」】


雨続き 干せぬ洗濯 たたむだけ

カビる気配に 気持ちも腐る


梅雨明けを 知らせる陽射し まぶしい

やっと晴れたか とたんに猛暑


氷買い 帰る道すがら 日が焼ける

ランドセル背負う 子らがまぶしい


エアコンを 我慢すればと 切ったあと

二分経たずに みんな文句言う


昼すぎに 起きてゲームに かじりつく

「勉強した?」に 聞こえぬふりで



【6〜10首:葉月・「休」】


盆入りて 親戚集う 仏間では

誰が本家か 誰も知らない


渋滞に うんざりしつつ 母子寝て

この瞬間 たぶん幸せ


今日はもう 遭遇なんて したくない

けれど回覧 こっそり出した


最終日 宿題終わったか 聞いてみた

「やべ、忘れてた」 また今年もか


冷房の 音しか聞こえぬ 八月の夜

子の寝顔だけ 夏を知らない


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『夏物語「乱」と「休」』 田波 霞一 @taba_muichi

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