33.ゴーカイザー内部
ゴーカイザーの内部に搭乗したが、内部は思ったより狭苦しい感じがする。
それだけ中身が詰まっているという事なのだろうか。
まだ操縦室ではないというのに、よく分からないボタンやゲージ、小さいモニターも複数道中に存在している。
そして頑丈そうな分厚い扉のところまで来たとこで、AIアシスタントの【アイル】ちゃんからお声がかかる。
『そこの扉の中央部分、黒い丸のところに手を押し当てて下さい』
「う、うん」
言われた通りに掌で触ってみると、『指紋認証確認』という機械音声が流れ、丈夫そうな扉が開く。
中に入ると周りは黒い壁で覆われており、中央にある薄く光るラインの付いた機械的な椅子が目立つ。
『まずはそちらの操縦席にお座り下さい。まず最初に記憶同調機能を作動させますので、リラックスしてお待ちください』
どこからともなくアイルちゃんの声が響き、俺は促されるまま操縦席と思われる中央の椅子に座った。
操縦席とは言うものの、操縦するようなボタンやハンドル、レバー等は一切見えない。
このゴーカイザーを起動させたら、下から何か出てきたりするのだろうか。
そんな事を考えながら座ると、アイルちゃんが自動で記憶同調機能とやらを作動させてくれる。
『シンクロ開始します』
俺は何となく目を閉じる。
座っている椅子から微振動が発生し、薄く輝いていたラインは、段々とその光量を増し、部屋全体が明るく発光する。
そしてゆっくりとだが、俺の頭の中に存在しないはずの記憶がインプットされていく。
なんというかこう、かつて経験した遠い過去を、思い出していくような感覚。
不思議と不快感は無く、確かにこの世界で生きた俺の証が刻まれていくような。
そうか、俺はこの世界では、こんな経験をして、こういう風に生きたんだなと。
俺が元いた世界より少し発展した先の未来で産まれ、悪の組織に家族を殺された俺は、悪の組織に対抗する為に絶え間ない勉強を重ね、技術を経て、この世界で戦った。
そしてしばらくして、悪の組織よりも強大な侵略者の宇宙人が到来する。
……………この宇宙人、規模がすごい。
これまずいな、ゴーカイザーだけじゃダメだ。
確かにこのゴーカイザーは凄い。凄いのだが、これだけではダメなのが記憶同調でわかった。
そうか、だからこそ異世界にいるもう一人の俺を呼んだのか。
異世界にいる俺が特殊な能力を持っていたら御の字、そもそもが賭け。
致命傷を負った俺はもはや死ぬ瀬戸際…、だからせめて、呼んだ者がどんなにひ弱だとしても呼ぶしか無かった。
一応弱かったら帰らせることも考えてたのか…。
でもお人好しであった俺に、彼は賭けた。
この世界の命運を、何かを持っているかもしれない俺の可能性に。
………。
とりあえず差し迫った脅威は、敵巨大浮遊戦艦100艦と、それに連なる巨大人型戦闘機10機づつ、つまり1000機ほど…。
そしてその後に現れる小惑星サイズの宇宙戦艦が1隻。
恐らく先行部隊である戦艦100艦であるが、その後の惑星サイズの戦艦にどれ程の戦艦や戦闘機が残っているのか分かったものではない。
だから俺は、どうにかあの先行部隊100艦隊を倒し、その全てを奪取、改造、強化し、自軍の戦力として迎えられなければ詰む可能性が高いらしい。
切り札であるゴーカイザーは1機しかないが、もし今襲って来ている全ての艦隊を強奪し、ゴーカイザー並の改造が間に合えば、どうにかあの巨大宇宙戦艦に残存する軍勢を相手にできると踏んでいる。
もしゴーカイザーが相手の艦隊より弱ければ、話にならない事であるが…。
いや、負けるはずが無い。
彼の意思は継いだ。
彼が生み出したこのゴーカイザー改なら、きっと勝てる!
「ゴーカイザー・メインシステム起動!!発進準備開始!!」
『了解。ゴーカイザー起動します』
アイルちゃんの声と共に、周りの黒かった壁が一斉に輝きだし、外の空間を鮮明に映し出してくれる。
アイルちゃんはサポートAIであり、ゴーカイザーのメインプログラムの一部でもある。
外の景色を映し出すこの空間は、まるで宙に浮いてる椅子に座っているような錯覚に陥ってしまいそうである。
だが一度記憶同調した俺は驚く事も無い。
「あ、そうだ。アイルちゃん、もう一人の俺に連絡をしたい。繋げてくれるかな」
『了解です』
俺のおねがいにすぐ反応し、周りの空間の一部に薄いウィンドウが現れ、そこに顔の濃いもう1人の俺が映し出される。
『どうした!?もう一人の俺よ!何かトラブルでもあったか!?』
「ああ、いや、そういう訳じゃないんだけど。その、君はそこの兵士達を倒したら、ゆっくり安静にして待っててくれ。奴らを倒したら、君の事もちゃんと助けるからね」
『フッ、そうか。では君が帰ったら、君の事も詳しく聞かせてくれ。君のようなもう1人のヒーローの話も、聞いてみたいからね』
「い、いや、俺はヒーローって訳じゃないんだけど…」
『ハッハッハッ!何を言うか!これからなるんだろう?ヒーローに!!』
「………!」
『それでは俺は、こいつらを倒したらしばらく休む!あとは頼んだぜ!ヒーロー!』
そう言って顔の濃い俺との通信は切れた。
(俺がヒーローかぁ…)
「………よし、行くか!!」
自然と笑顔になりながら、俺はそう叫んだ。
『ゴーカイザー、発進します』
その声と同時に、ゴゴゴゴゴと機体が大きく揺れ動く。
いや、機体だけでは無い、この建物も大きく動いている。
そしてゴーカイザーの真下の地面が迫り上がり、開いた上部のハッチからゴーカイザーが真上へ移動をし始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます