32.AIアシスタント

エレベーターで登っている最中、俺は手持ち無沙汰に腕に着けたデバイスに触ってみる。


触れてみればなんということか、近未来的なホログラムが出現するではないか。


感動した。


映画とかでよく見る演出を現実で目にできる日が来るとは…。


触れてみると質量は感じないが、少しだけ熱を感じる。


「どういう原理で動いてるんだ…」


つい独り言がもれ出してしまう。


『ご説明致しましょうか?』


どこからともなく声が聞こえた。


このデバイスからでは無い気がする。


立体音響というか、俺の周りにだけ音が響いてるような。


『私はAIアシスタントの【アイル】ちゃんです』


「あ、アイルちゃん…」


『はい、アイルちゃんです。先程のご質問ですが、現在駆動しているホログラム機能について、解説しましょうか?』


そう丁寧に質問してきた。


「あ、じゃあお願いします…」


『かしこまりました』


そう言って恭しい態度でホログラム機能の説明をされたが、思ったより知らない単語が多くてほとんど理解できなかった。


とりあえず分かったのは、よく分からないエネルギーによってこの機械は作動しているということだった。


ティローンという効果音がエレベーター内に響き、目的の場所に到着した事を告げる。


俺は駆け足で廊下を走る。


廊下のガラス張りから見えるゴーカイザーの後ろへ向かって走り、チラチラと横目でゴーカイザーを眺める。


流石この世界の俺が考えただけあってか、俺にとってもこのゴーカイザーはとても格好良く見える。


俺が今からこのゴーカイザーを操作すると考えると…。


あれ?操縦ってどうするんだ?


いや真面目な雰囲気でつい流されて頷いたけど、このゴーカイザーってどうやって操縦すればいいんだろうか。


…あ、確かAIに聞けとか何とか言ってた気がするな。


「え、えっと、アイルちゃん?あのゴーカイザーって、どうやって運転する感じなのかな」


『安心してください。この世界の山田春様と同一人物であれば、記憶同調機能が使えると思いますので、ゴーカイザー内部に到着次第、シンクロを開始致します』


「記憶同調機能かぁ…。それってこの世界の僕の記憶が全部流れ込んで来る感じなの?」


『おっしゃる通りでございます。ただ、全ての記憶の同調に忌避感がございましたら、一部の記憶、今回であれば【ゴーカイザーに関する知識】のみを同調させる事も可能です』


「そっか…、結構配慮してくれるんだね」


『ええ、今は世界の危機ですから、出来るだけご希望にお応えする所存です』


「そうか、そうだよね、うん。…同調は全部の記憶で大丈夫だよ。たぶんこの世界の俺はそう望んでると思うし」


『…ありがとうございます』


そうこう話している間に、ゴーカイザーの背中にある搭乗口に到着した。


…これってここ以外で乗り降りする時どうするんだろう。


まぁでもその辺も記憶同調で分かるようになるか。


そう考えて俺は、さっそくゴーカイザーの内部へと搭乗した。


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