#7

全身を洗い終えた彼女は俺の頭にシャワーをかける。

俺は相変わらず背中を向けたまま。

『私が頭を洗ってもいいですか?』と問いかけてくる。

「へ…へぇ…どうぞ…」と江戸っ子のようになる。

『ふふ…では…失礼しますね…』と言いシャンプーを頭にかけワシャワシャする。

俺は幼少期を思い出していた。

親に頭を洗ってもらった遠い記憶が蘇る。

あまりの心地良さに眠たくなってくる。

「なんか眠たくなってきちゃった」と言うと、

『心地良さそうで良かった…』と言う彼女。

「めっちゃ気持ちいい…」と心の声が言葉になる。

『良かった、流しますね』と言うと頭にお湯がかけられる。

いつものクセで自分で頭をワシャワシャした。

『ちょ…ケンさん!シャンプー飛び散ります…私の目に入っちゃう…』と言われてしまう。

「あ、ごめんなさい…ついクセで…あの、ありがとう…何か安心出来た」言い大人しくする。

彼女は『良かった』と背中越しに微笑んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る