宵の盃

Rie

— おぼろ酔い —

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灯りを落とした 小座敷の奥

硝子の器に 月が揺れている


言葉もなくて それがよくて

指先で お酒をすすめ合う


伏し目がち ゆるりと笑う その横顔

こぼれた髪に 夜の気配が宿る


指先ひとつ 触れぬ距離にも

なぜこんなに 酔わされてゆくのだろう


盃に残る くちづけの跡

なぞるように わたしも口をつけた


屏風のむこう 遠く虫の声

とけてゆくのは 酒か心か


ねえ、酔いがさめても

あなたの中に 今夜を残して



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宵の盃 Rie @riyeandtea

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