第五章 悩める少女? 零奈の気持ち

第1話 燈弥のリベンジ

 片瀬さんのけん玉教室で『共鳴』の称号を獲得した翌日、俺は燈弥と一緒に片瀬けん玉教室にきている。


 堅翔は今日は家の用事で出かけるって言ってたから、今日は燈弥と二人だ。


 そして——目の前では燈弥のパートナーのマサムネが大剣を握り、片瀬さんのパートナーのミズキに向けている。


 今、燈弥が片瀬さんの試練を受けている。その様子を椅子に座って見ている。ドキドキしてどうしても手をギュッと握ってしまう。


「昨日はしてやられたが、今日はそうはいかんでぇ!」

「マサムネ、俺たちの絆の力、片瀬さんに今度こそ見せてやろうぜ!」

「もちろんや!」


 ——うん! 今の燈弥たちなら大丈夫だ!


 俺は燈弥のマサムネの様子を見て、ぎゅっと手を握った。


 チャージ中も燈弥はマサムネの得意な中皿を決めていた。やる気に満ちたマサムネの表情からも、力がみなぎっているのが伝わってくる。


 片瀬さんは、燈弥とマサムネの様子を見て嬉しそうに笑っている。


「うん、昨日試練を受けにきた時とは別人みたいだよ! 剣城くんとのバトルの後から、表情から焦りも消えてるね! それに——」


 と言って、片瀬さんは改めて燈弥とマサムネのことを見て頷いた。


「——マサムネとも共鳴できているみたいだね。ミズキ、彼らの力を見定めるよ!」

「かしこまりました——」


 ミズキはそう言って、流れるような動きで二本の剣を構えた。


「——剣から迷いが消えていますね。……いいでしょう、本気でかかってきてください」


 ミズキの鋭い眼差しに、マサムネが一瞬怯んだように足が一歩後ろに下がったけど、すぐに剣を構え直していた。


 


「……やっぱ、お前は強そうやな——でも、俺たちの力を見せつけたる! いくでぇ、燈弥!」

「おう! お前の強さ見せつけてやれ!」


 燈弥の声に合わせて、マサムネが剣をぎゅっと握ると、剣がバチバチと雷を纏った。


 ——マサムネは攻撃タイプで、雷属性を持ってる


 攻撃タイプで一撃の力が重いのに、雷属性でさらに攻撃力を上げている。一撃の攻撃力はとんでもなく強い!


 マサムネは剣を両手で握りしめながら、二本の剣を構えるミズキに向かって、掛け声を上げながら駆け出していく。


「いっくでえ! 必殺、雷神斬破ッ!」


 ミズキに対して振り下ろされた、マサムネの一撃。剣と剣がぶつかりあう、金属の音が試練場に響き渡った。


「やはり、昨日とは比べ物にならない力量ですね」

「燈弥には剣城っちゅー友達ができたんや! もう迷うことはあらへん——って、うお!?」


 剣で押し合っていたマサムネとミズキだったけど、ミズキの剣が、マサムネの大剣を横へと流した。その一連の動きは、まるで流れる水のような感じだ。


 身体をひねるようにして、まるで風のような動きでマサムネの大剣を避けた。


 マサムネは、勢いそのまま体勢を崩して、うつ伏せで床に倒れ込んだ。


 ——やっぱり、ミズキはすっげえ!


「我が主人、昨日とは比べ物にならない力です。力量は問題ないかと」


 剣を鞘に納めたミズキが片瀬さんに言うと、片瀬さんも嬉しそうに頷いていた。


「その通りだね。心で向き合って、技をしっかりと体現できていた——うん、合格だよ燈弥くん!」


 燈弥とマサムネが顔を見合わせていると、試練場にバトルギアのアナウンスが流れた。


『試練監督片瀬蓮斗の基準に達しました。五十嵐燈弥選手『共鳴』の称号獲得です』


 燈弥のバトルギアの画面が輝いた。画面を見た燈弥が満面の笑みを浮かべてマサムネとハイタッチして喜んでいた。


「やったああああ! 俺たち、やったんだなマサムネ!」

「俺たちの力証明できたな、燈弥!」


 嬉しそうにしている二人を見て、もう静かに座っているのも限界だ。


 俺は走って燈弥とマサムネのそばまで駆け寄った。


「燈弥! 試練合格おめでとう!」

「おう! やったぜ!」


 俺と燈弥もグータッチをして笑い合っていると、マサムネが俺の頭に手を乗せてきた。


「ほんま、試練に合格できたのも剣城のおかげや! ありがとうな」

「そ、そんなこと……」

「おおありや! 剣城のおかげで燈弥は変われた——それは紛れもない事実や! なっ、燈弥」


 マサムネに見つめられて、燈弥も頷いた。


「……マサムネの言う通りだ。剣城のおかげで俺はけん玉の楽しさに気づけたんだ。本当にありがとな!」


 そんなことを言われると嬉しくないわけがない。

 

 でも、身体が熱くなってくるのを感じる。顔も真っ赤だ。


 帽子のつばを下げて顔を隠しながら俺は言った。


「……は、恥ずかしいだろ。でも、そう言ってもらえると、嬉しいよ」


 そんな俺の様子を燈弥とマサムネは笑って見ていた。

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