第5話 炸裂! 必殺技

 やっぱり、チャージ技に限界があるから基礎技の中で一番チャージできる『とめけん』を決めても、ゴウの防御力を破る攻撃はできない。


 ユキトも頑張ってくれているけど、すごく疲れているように見える。それに、ゴウの攻撃をなんとか避けてはいたけど、技の反動によるダメージを喰らってしまっている。


 ——ダメージも結構食らってるから、そろそろやられちゃう……。


 ユキトは片膝をついて苦しそうに息をしている。それでも、ユキトは諦めていない。剣を杖代わりにして立ち上がった。


「次の攻撃で僕の勝ちかなー?」


 堅翔はニヤリと笑っている。


 ゴウもまだまだ余裕そうで、槍をユキトに向けている。


「……くそっ!」


 俺はユキトが攻撃される度にドキドキしていた。でも、諦めないユキトを見て俺も諦めずにチャージしていた。


 だけど、攻撃されて苦しそうなユキトをこれ以上見てられない。


 バトルギアの画面を見ると『降参』の表示がある。


 これ以上は続けられない——と思っているとユキトが首を振った。


「……剣城くん、ここまで頑張ったんだ。最後まで諦めないで」

「でも、これ以上ユキトが傷つくのは——」


 見てられない、と言おうと思ったけどユキトは俺に笑顔を浮かべて言った。


「大丈夫、ここまで僕を信じてくれたんだ。剣城くんなら僕の力を引き出せる!」


 直後、バトルギアからアナウンスが流れた。


『チャージ完了! 必殺技ゲージ最大値に到達——解放条件、満たされました! 必殺技、使用可能です!』


 バトルギアの画面には『必殺技を使用しますか?』と表示されている。


 ——なるほど、ユキトはずっと必殺技チャージを待ってたんだ!


「最初の攻撃で、あまり技が通用しないと思ったからね、チャージに力を注いでいたんだ」

「そっか、だからゴウにあんまり攻撃しないで避けてたのか!」


 ユキトの言ってた諦めないでチャージしてって言ってたのはこのことだったんだ。


「必殺技だってー!? ゴウ、気をつけてね!」

「……分かった」


 ユキトが必殺技を打てることに堅翔たちも警戒しているようだ。


 ここまでユキトと諦めないで頑張ってきたんだ。


 ——必殺技、もちろん使うに決まってんだろ!


 俺は、バトルギアの画面をタップした。


「ユキト! いくぞ、必殺技だ!」

「ありがとう——いくよ!」


 ユキトが剣を鞘にしまうと、周囲に赤い風が巻き起こった。足元には赤い紋章が浮かび上がっている。


「剣城くん信じてくれてありがとう」


 ユキトの言葉に心臓がドクンと鳴った。


 ——けん玉バトル……やっぱり最高だ!

 

「必殺——」


 と、ユキトがつぶやいた次の瞬間にはゴウのそばまで移動していた。


「……な、に!?」


 驚くゴウを気にしない様子でユキトは剣を振り抜いた。


「——抜刀、煉獄一閃!」


 ユキトが剣が振り抜いた瞬間、空気がバチッと焼けるような音がした。 赤く燃え上がる炎が龍みたいに剣を取り囲んでる。


「ゴウ、防ぐんだー!」


 ゴウも盾で防ごうとしていたけど、今までのチャージの力をすべてぶつけてるから、盾にも次第にヒビが入って——


「うそー!?」


 ゴウの盾を破壊した。そのまま地面にも亀裂が入っていた。


「ユキト、いっけー!」


 炎をまとった剣はそのまま、ゴウを切り裂いて、吹っ飛ばした。


「ゴウ!?」


 地面に倒れたゴウはそのまま起き上がらず——その様子を堅翔は口を開けてぽかんと見ている。


「まさか、バトル初心者の剣城に負けるなんて……」


 ユキトもふらついて倒れそうになったけど、剣を支えにして膝をついている。


 ——さっきまでの動きがウソみたいだ。あれが……チャージを溜めたユキトの本気なのか!


 感心してる場合じゃない。俺は急いでユキトに駆け寄った。


「……ユキト! 大丈夫!?」

「うん、剣城くんのおかげさ。信じてくれてありがとう」

「うん!」


 二人でハイタッチして笑い合っていると、バトルギアからアナウンスが流れた。


『ゴウ戦闘不能! よって勝者、逢坂剣城選手!』


 バトルギアのアナウンスを聴いて俺は思わず叫んだ。


「よっしゃあああぁぁぁ!」


 勝ったんだ、俺たちの力で!


 ——これから、もっとユキトと強くなってやるぜ!

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