第6話 試練を受けに行こう

 勝負が終わって、堅翔と握手をした後で俺たちはまたベンチに座っている。


「いやー、まさか必殺技をつかってくるとは思わなかったよ」

「全部ユキトのおかげだ」


 ユキトはバトルギアの中に戻っている。


 ——バトルで疲れたもんな。今はゆっくり休ませてあげよう


「それより、初心者相手に本気出しすぎだろ! 基礎技以外も使ってくるなんて、ずるいぞ!」

「だってー、プリンがどうしても欲しかったんだよー」

「……そんなことだと思ったけど、めっちゃ焦ったぞ!」

「ごめんよー」


 手を合わせて謝ってくる堅翔に怒る気持ちはもうない。


「全く……今回は許してやる。プリンも取らないよ」

「本当!?」

「ただし、今回だけだぞ! 次はズルなしで勝負だからな!」

「はーい……ほんとはさ、剣城とバトルできるの、すっごく楽しみにしてたんだよねー」

「俺も!」


 嬉しそうにしている堅翔を見て俺は笑った。


 だって、プリンも別にどうでもいいと思えるくらいにけん玉バトルは楽しかった。パートナーの技と技のぶつけ合いにはすっごく興奮した。


 ——今回はユキトの必殺技があったから勝てたけど……。


 だけど、あんまりパートナーが傷つくのは見たくない。


 堅翔のパートナーのゴウの技を受けて吹っ飛んだりしていて、心配になった。


 そのためにも——


「試練を受けて、称号をもらって、もっと強くならないといけないな」


 手をぎゅっと握って気持ちを伝えると、堅翔も頷いていた。


「僕も、バトル初心者の剣城に負けたのは悔しいよー」

「じゃあ、これからけん玉教室に行こうぜ! 試練を受けにさ!」

「いいね! いこーいこー」


 近くのけん玉教室といえば、昨日行った片瀬さんの教室がある。

 

 ——片瀬さんに、今の俺の気持ちを伝えたい!


「近くにけん玉教室があるんだよ! 俺がバトルギアをもらったところ。そこに行こうぜ!」

「剣城の運命の人のいるところだねー。僕もまだそこで試練を受けたことないから、そこに行こう!」


 行く気満々だったけど、時間がバトルをしていたら十一時を回っている。


 このまま試練を受けに教室に行ったら昼ごはんに帰る約束を守れなくなる。


 バトルギアを使っていい条件は、しっかりと家のことをすることだ。


「……残念だけど、昼ごはん食べたらまた集合でいいかな?」

「そうだねー、お腹すいたし」


 帰ろうかと思って立ち上がると、堅翔が言った。


「ちょっと待ってー。まだ、バトルギアのフレンド登録してないよ」

「……あっ」


 ギアを起動してすぐにバトルをしたから、フレンドの登録をしていなかった。フレンドの登録をしておくと、フレンドとはメッセージのやり取りができる。


 今までは母さんのスマホを借りて電話をしていたけど、バトルギアがあれば連絡ができる。


 ——何だか、大人になったみたいで嬉しいな。


 パートナーだけじゃなくて、堅翔ともつながってる感じがして、なんだかすごくワクワクする。


 バトルギアを操作して、堅翔をフレンドに登録した。


「よっし、じゃあ昼ごはん食べ終わったら連絡し合おう!」

「うん! じゃあ一時解散ー」


 二人で昼ごはんはなんだろうと話しながら、歩いて帰った。


 ——試練を受けて強くなって、今度はユキトを俺の力で勝たせるんだ!

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