第7話 消えない疑問

 長く生きてきたためなのか、それとも単純に私の日本空白期間が16年ほどあるからか、お迎え間際になって気になる疑問がいくつかある。恐らくほとんどが解決されていると思うのだが、念のため皆さんに確認してもらいたい。

 1.豊田商事事件の多額不明金はどこへ?(1985年、豊田商事会長殺人事件)

 2.教育委員会の教員不正採用問題は解決したのか?

 3.マスコミのコネ入社はもうなくなったのか?

 4.ポプラ社の八百長審査問題は反省、公表されたのか?

 といったところである。

1.について

 金(gold)の預かり証だけで2千億円もの金を集めた詐欺事件だが、「豊田商事」会長が殺害された後の調べでは、半分以上の千二百億円が行方不明であった。会長殺害の2人の犯人は、懲役10年、8年を受け既に出所しているが、マスコミに煽られたという主張が、情状酌量になったものらしい。

 それにしても、計画的な惨殺事件の主犯が10年の懲役とはおかしな話で、オカシイのはそれだけではなく、犯人が会長宅に押し込んだ日が、警察から会長が事情聴取を受ける前日だったことだ。

 なぜ1200億円以上の金の流れが不明なのか、それとも検察や裁判所により既に解明されているのか、マスコミは真相を報道したのか、私は気になって仕方がない。なにしろ、ロッキード事件とは不明金額が桁違いである。30億円がアメリカから日本側に流れ、5億円が当時の田中首相に渡ったとされるスキャンダルにかき消されたせいもあるのだろうが、児玉誉士夫に渡された21億円の流れが解明されなかったのとは訳が違うと思うのだが。

 私は十数年マニラにいたので、この種の話は警察、検察、政治家、裁判官、ヤクザ組織の繋がっている事が多く、珍しくもないのだが、日本ではどうなのだろう。こんな私の疑問を払拭し、現在の日本が裏も表もない立派な国であると、誰か証明してもらえないだろうか。

2.について

 十五年ほど前の新聞記事なのだが、私が教員を目指していた50年前から噂されていた問題であったこともあり、未だに私の頭から離れない。

 大分県教育委員会の不祥事に関する2008年7月の毎日新聞記事を要約すると、一科目も受けずに合格させたり、合格枠41人に口利き採用40人(いずれも小学校)という出鱈目な実態であった。

 更に問題なのは、大分県を含め、新聞社からの問い合わせに対し、有力者に発表前の合否通知をしている「教委」は、37道県にもなるという当時の回答である。勿論、他の都府県が正直に回答しているかは分からないが、ちなみに、「問い合わせのある有力者」とは、市議、県議、首長、副首長、教委OB、国会議員もしくはその秘書などらしい。

 昨今の教師による不祥事をみると、変態暴力教師が悪いのは勿論だが、採用する側の問題はないのだろうか。今の教育委員会では、教頭や校長昇進に際して謝礼金20万、50万といった慣習はなくなったのか、有力者の事前合否問い合わせや教師のコネ採用はなくなったのか、気になるところである。

3.について

 50年前の学生時代、新聞記者になるのは難しかった。学校推薦がなければ三大新聞は受からないと言われ、「時事」や「共同」には募集がなかった。つまるところ、裏ではマスコミもコネ入社が常識だったのであるが、それは噂だけだと私は思っていたのである。

ところが事件が起きたことで、私はマスコミ業界の裏を知った。それは、みのもんた氏の息子が起こした不祥事からで、2013年の月刊「文藝春秋」に同氏が発表した記事からである。

 その記事によると、息子が「日本テレビ」を受験したものの、名前しか書けなかったと本人から聞き、みの氏が氏家社長(当時)に頼み込んだところ、社屋移転のため力持ちが必要という口実で社員に採用されたと書かれている。

 何度も書いて申し訳ないが、私はフィリピン暮らしをしていたので、賄賂やコネなどは当たり前という感覚もあるのだが、それにしても我が日本、天下の「日本テレビ」がこれかと思うと、「国民に真実を伝える義務がある」などと、マスコミが正義面をする根拠は何なのかと思ってしまう。

 こんな疑問は今浦島の私だけのものであり、現在のテレビ局や新聞社では、政治家や有名人の子弟など、コネ入社は一切なくなっているのだろうか?

4.について

 もう15年前の話になるが、複数の週刊誌で八百長が指摘された、ポプラ社と映画俳優水嶋ヒロの問題はどうなったのだろう。「ポプラ社小説大賞」二千万円の懸賞に対して、千二百件の応募があった中から水嶋氏の作品が選ばれたと言うが、後半は改稿するような作品であったとポプラ社の幹部は述べている。

 問題はポプラ社が有名な児童本出版社で、良心的な会社と思われていたことだ。しかも、通常では百万程度なのに、二千万という破格な小説懸賞金である。話題になるのは当然であり、水嶋ヒロ氏が二千万円の受け取りを辞退しているにも関わらず、ポプラ社は週刊誌の疑惑を否定していた。


 何でもかんでも疑問に思うひねくれた性格のためか、理不尽が許せない体質のためか、自分には関係ないことを随分と頭に留めてきた。ここで書いてしまった疑問により皆さんに不愉快な思いをさせてしまったら、お許し願いたい。

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