第12話 聖夜の誘いと高まる予感
十二月二十四日、クリスマスイブの夜。佐倉家のリビングは、ささやかながらも温かいパーティーの熱気に包まれていた。テーブルには、朋子(ともこ)が腕を振るったローストチキンやサラダ、そしてクリスマスケーキが並び、健一(けんいち)の朗らかな笑い声が響く。悠人(ゆうと)もまた、彼らが本当の家族のように自分を受け入れていることに、穏やかな幸福感を感じていた。
しかし、その温かい雰囲気の中で、悠人と葵(あおい)の間には、これまで以上に熱を帯びた空気が流れていた。葵は、いつもよりずっとおしゃれをしていた。自宅で過ごすクリスマスの夜にしては、少しだけ張り切りすぎているようにも見える、ワインレッドのニットワンピース。すらりとした体格にフィットするその生地は、彼女の女性らしい曲線、特にCカップの胸元を際立たせていた。悠人は、食事中も葵の姿から目を離すことができなかった。
葵は、親たちの前でも、悠人へのスキンシップを止めない。
「ねえ、悠人さん、このチキン美味しいよ。あーん」
そう言って、葵はフォークに刺したチキンを悠人の口元に運ぶ。悠人は少し戸惑いながらも、それを受け入れた。朋子も健一も、微笑ましげにそれを見守っている。その視線は、「悠人の婿入りは時間の問題」という彼らの認識を、再び悠人に突きつけているようだった。悠人にとっては、もはやこれは「家族」という建前を装った、公然の「誘惑」に他ならなかった。
パーティーが終わり、片付けを手伝い終えた後、健一と朋子が「じゃあ、おやすみ」と声をかけ、それぞれの寝室へと戻っていった。リビングには、二人の吐息だけが残る。悠人は、もうすぐ十一時を回ろうとしている時計を見上げた。
自室に戻り、ベッドに腰掛けていると、コンコン、という控えめなノックの後、ドアがゆっくりと開いた。そこに立っていたのは、部屋着に着替えた葵だった。淡いピンク色の、ゆったりとした素材のパジャマ。それは、先ほどのワンピースとは対照的に、彼女の無防備な一面を強調していた。
「悠人さん、まだ起きてたんだ。私、眠れなくて」
葵はそう言いながら、悠人のベッドサイドに座り込んだ。彼の隣にぴたりと体を寄せる。部屋の暖房が効いていても、彼女の体温が悠人の肌にじんわりと伝わってくる。
「今日のパーティー、楽しかったね」
葵はそう言うと、悠人の手を取り、自身のCカップの胸元にそっと押し当てた。悠人の手のひらに広がる、柔らかな乳房の感触。それはパジャマの生地越しでも、その弾力と温もりを鮮明に伝えてきた。悠人は、彼女の視線に抗えない。葵の瞳は、これまでの悪戯っぽい光ではなく、どこか切実な、すべてを受け入れようとするような情熱を帯びていた。
「ねえ、悠人さん」
葵は悠人の顔をゆっくりと引き寄せ、唇を重ねてきた。それは、これまでの挑発的なキスとは明らかに異なっていた。彼女の舌が絡みつき、口内を貪るように深く吸い上げる。甘く、熱く、そしてどこか悲しいほどに求め合うようなキスだった。悠人は、もう自分の理性が限界にあることを悟った。親たちの「高校生である間は避妊してくれればいい」という言葉が脳裏をよぎるが、葵への抑えきれない感情と、彼女の熱情がそれを上回る。
葵の指が悠人のシャツの裾に滑り込み、彼の肌を撫でた。そのままゆっくりとシャツのボタンを一つ一つ外していく。悠人の心臓は、激しく、しかしどこか諦めたように鳴り響いていた。もう、後戻りはできない。聖夜の誘いが、彼らを禁断の境界線の向こうへと引きずり込もうとしていた。
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