第11話 夜の誘惑と理性の崩壊
映画デートから帰宅したその夜、悠人は自室で翌日の大学の講義準備をしていた。映画の余韻がまだ心に残っていた。握り返された葵(あおい)の手の感触が、悠人の指先にじんわりと熱を帯びていた。それは、葵が彼からの接触を受け入れた初めての瞬間だった。その小さな一歩が、彼の心に大きな波紋を広げているのを自覚する。
コンコン、と控えめなノックの後、ドアがゆっくりと開いた。そこに立っていたのは、パジャマ姿の葵だった。彼女は、いつもの無邪気な笑顔ではなく、どこか挑発的な、あるいは獲物を狙うような眼差しで悠人を見つめていた。
「悠人さん、まだ起きてたんだ」
葵はそう言って、悠人の返事を待たずに部屋に入り込んできた。そして、そのまま悠人のベッドにすっと潜り込む。悠人は身構えたが、葵は既に彼の隣にぴったりと密着していた。柔らかなショートヘアが彼の首筋にかかる。
「ねえ、悠人さん。映画、すごく良かったね」
葵が耳元で囁く。その吐息が熱く、悠人の全身に甘い震えが走った。彼女の手が、悠人のパジャマの裾からゆっくりと滑り込み、彼の肌に直接触れてくる。ひやりとした指先が、彼の腹部をそっと撫で上げ、そのまま胸元へと向かってきた。悠人は、身動き一つ取れないまま、その感触に息を呑む。
「悠人さん、ここ、温かいね」
葵はそう言って、彼のTシャツの生地越しに、心臓の鼓動を感じるかのように、手のひらを胸に押し当てた。彼女の言葉とは裏腹に、その指は少しずつ、しかし確実に悠人のパジャマのボタンを探っていく。一つ、また一つと、躊躇なくボタンが外されていく。悠人は、制止しようとするが、口から言葉が出てこない。目の前には、暗闇の中でも輝くような葵の瞳があった。
彼の柔道で鍛え上げられたがっしりとした胸板が、露わになる。葵の指先がその肌をなぞり、悠人の心臓の鼓動は激しくなる。彼女の無邪気なふりをした大胆さに、悠人の理性は限界に達していた。
葵は、悠人の反応を楽しんでいるかのように、彼の硬直した手を取り、自身のCカップの胸元に優しく押し当てた。悠人の手のひらに広がる、柔らかな乳房の感触。それは、ブラジャーの生地越しにすら、その弾力と温もりを鮮明に伝えてきた。悠人の理性の最後の砦が、音を立てて崩れ去っていく。
「もう、我慢できないんでしょ? 悠人さん、私、全部知ってるよ」
葵は悠人の目を覗き込み、挑発的に微笑んだ。その言葉は、悠人がこれまで葵の過剰なスキンシップに翻弄され、抑えきれない欲求を抱えていたことを見透かしているようだった。悠人は、自己嫌悪と同時に、抗えない陶酔感に襲われた。彼の身体は、葵の甘い匂いと温もりに包まれ、完全に彼女の支配下にあるようだった。
葵の指が、悠人の顔をそっと撫で、唇に触れる。そして、ゆっくりと、しかし確実に、二人の唇が引き寄せられ、深く重なり合った。それは、これまでのどんなキスよりも情熱的で、悠人の心と体を完全に絡め取るようだった。彼の頭の中は真っ白になり、ただ、目の前の葵の存在だけが全てを占めていた。
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