第7話 陽光の下の誘惑と本能の目覚め

八月上旬、真夏の太陽が降り注ぐ中、悠人と葵は電車を乗り継ぎ、人気の海水浴場に降り立った。降り注ぐ陽光と、潮の香りが混じり合う独特の匂いが、非日常感を一層高める。


「悠人さん、遅いよー!」


悠人が海の家の更衣室から出てくると、葵の声が響いた。視線を向けると、彼は思わず息を呑んだ。葵は、白いシンプルなビキニをまとっていた。すらりとした体格に、健康的な肌。そして、Cカップの乳房を強調するようなデザインの水着は、彼女の女性としての魅力を最大限に引き出していた。陽光を浴びて艶めく肌には、微かに汗が光っている。水着の下に隠された肌を想像させる描写が、悠人の意識を捉えて離さない。


(慣れてはいたはずなのに……)


悠人は内心で呟いた。いくら毎日一緒に風呂に入って、彼女の髪や体を洗ってやったり、葵が自宅内を下着姿で闊歩したりする光景に慣れてきてはいた。むしろ、それらの行為を通じて、彼女の身体に触れることへの心理的な抵抗は薄れてきていたはずだ。だが、水着姿のインパクトは、それらとは全く次元が違った。公然と、しかし健康的で無邪気な形で晒された彼女の身体は、悠人の理性の一番奥深くを直接揺さぶるような、抗いがたい力を持っていた。


「その、似合ってるな」

悠人は、かろうじて声を絞り出した。葵はにこりと微笑むと、砂浜に敷いたレジャーシートへと駆け寄った。その一歩一歩が、悠人の心を揺さぶる。


「悠人さん、早くこっち来て! 暑いよ!」

葵に誘われるまま、悠人も砂浜へ足を踏み入れた。熱を帯びた砂が足の裏に心地よい。葵は早速、海へと駆け出した。悠人もその後を追う。


波打ち際で、葵が楽しそうに水しぶきを上げた。

「きゃっ! 冷たい!」

波が来た瞬間、バランスを崩した葵が、悠人の胸に倒れ込んできた。悠人は反射的に葵の腕と腰を支えた。濡れた肌と肌が密着する。水着越しに伝わる葵の体温と、柔らかな感触。悠人の心臓が激しく脈打つ。葵は悪びれる様子もなく、顔を上げて悠人を見上げた。その瞳は、夏の太陽のようにきらきらと輝いている。


「悠人さん、ありがと!」


彼女の無邪気な笑顔が、悠人の理性をさらに削り取っていく。海の中では、葵が水をかけたり、背中合わせで泳いだりするなど、無邪気に距離を縮めてくる。水の中で、互いの身体が触れ合う度に、悠人の心は波のように揺れ動いた。


海の家に戻り、休憩を取ることにした。日差しを避けるように、パラソルの下のベンチに腰を下ろす。悠人の隣に座った葵は、無意識のように悠人の太ももに手を置いたり、自身の濡れた身体を彼に少しだけ押し付けてきたりする。悠人は、葵の肌の温もりと、そこから立ち上る潮の香りに、普段以上に本能的な欲望を刺激された。彼の意識は、触れたいという欲求で埋め尽くされていく。


「ねえ、悠人さん。ここ、焼けてないかな?」

葵はそう言って、水着のストラップをわずかにずらし、肩のあたりを悠人に見せた。その仕草に、悠人の視線は吸い寄せられる。露出された肌は、僅かに赤みを帯び、健康的な艶を放っていた。


(もう、限界だ……)


悠人は、自分がもう単なる「従兄」として葵を見ることができないことに苦悩していた。彼の頭の中では、親からの「責任」の警告と、葵の「悠人さんからはダメ」というルール、そして自身の抑えきれない欲望が激しく衝突する。彼は、このままではいつか、その境界線を越えてしまうのではないかという、強い焦燥感に駆られていた。真夏の太陽の下、彼の理性は今にも溶けてしまいそうだった。


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