第ニ章:案内人アテナ

マインド・ワールドに降り立つと、そこは絵本から飛び出したような村。


パステルカラーの家々、花が笑う庭、木々の間に揺れるハンモック。


だが、真莉の胸には、いつもの孤独が刺さる。


「いらっしゃい、お客人。」


柔らかな声。


振り返ると、フクロウのようなフードに身を包んだ少女が、鳥のように舞い降りる。


「あ!新しい人だ!おーい!」


獣の姿の子供たちが彼女を囲み、愛らしい笑顔で手を振る。


「怖がらないで。私はこの村の案内人、アテナ・ラクシュミー。あなたのユーザー名『真莉』って表示されてたから、すぐわかったの。ようこそ、私たちの楽園”トトの村“へ。」


アテナの手は温かく、真莉を広場へ導く。


村の歴史を語る彼女の声は、子守唄のようだ。


「昔、この村は子供たちの夢から生まれたの。現実で傷ついた子たちが、動物たちの歌に導かれて集まったんだ。


その動物に敬意を示して、皆動物のアバターを使ってる。動物って、純粋な心を守ってくれるお友達だと思わない?」


真莉は答えた。


「それについては同意だけど…、なぜあなたはフクロウの姿を…?」


その問いに、アテナはこう答える。


「…フクロウはね、闇の中で光を見つける守り神だから、そんな存在で私は居たいなって。」


広場では、村人たちが歌い、踊る。


森のフクロウたちが羽を揺らし、拍子を取るように鳴く。


「トトの村は、トト神を崇める場所なの。この村では、トト神が作ってくださった村の創設を記念する祝祭があってね。みんなで踊り、騒ぎ、笑い合う、とっても自由で楽しい日なの。美味しい料理もたくさんあるし、まだその日は遠いけど、楽しみにしててね。」


真莉の心が、久しぶりの温もりに震え、涙がじんわりと浮かぶ。


「(ここなら…また愛してもらえるかも、そんな気がする。そのうち暮らせたらいいな…。)」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る