第三章:トトの村での暮らし


半年が過ぎ、真莉はトトの村で暮らすことを決断し、現実を捨てた。母の冷たい視線、クラスメイトのいじめを忘れ、トトの村での日常を楽しんでいた。


朝、ウサギの耳の少女が草を束ね、真莉と一緒に花冠を編む。彼女の指先は器用で、出来上がった冠を真莉の頭にのせ、にこっと笑う。


キツネの耳の少年は、森で拾った木の枝を削り、笛を作り上げる。真莉が吹くと、かすれた音が村に響き、二人は顔を見合わせて笑う。


村の川辺は、羊の角を持つ少女が水を汲み、真莉に手伝いを求める。桶を運と間に、互いに名前を教え合う。


「ほら!マリお姉ちゃん!早く早く〜!」


「もう〜、焦らないの!お水溢れちゃうよ?」


村の暮らしは単純だが、温かい。


真莉は毎朝、村の友達と森を歩き、木の実を拾う。雨の日は、屋内で羊毛を紡ぎ、子供たちと歌を口ずさむ。


半年の間に、トトの村はすっかり彼女の居場所となっていた。


昼、村の広場では、羊の角の少女がパン焼きを始め、真莉も生地をこねる。焼きたてのパンを分け合い、温かさが胸に染みる。


夕方、フクロウが木に止まり、村人たちがその下で集う。真莉も加わり、焚き火のそばで北欧風のドレスを整えながら耳を傾ける。村の歴史を聞く。トト神が動物たちに指示し、救われない子供達を導いた話に、目を輝かせる。


その後、真莉は村の境界を一緒に歩き、アテナと木の柵を直す手伝いをする。夜、月明かりの下でアテナが言う。


「真莉、君がここにいてくれると、村が生き生きしてる気がして、君のその笑顔が村を明るくする。きっと、トト神も喜んでるよ。」


真莉は毎晩、村人達と川辺で石を積み、木を集め、木工を教わりながら簡単な家具を作る。


村の音――子供の笑い声、木の軋み、風のささやき――あらゆるものが、彼女の心を満たしていた。

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