第20話 あやかしさん
「っていうね?どちらも悪なお話さ。」
虫の声がうるさい。風情のふの字もないな。
「良かったよ?」
「侍の持つ刀は本当は…」
「おっと。ネタバラシは私は好きじゃない。あとはご想像にお任せします」
本当に面倒なやつだな寺の子は。
「ふう。落ち着いたところで次行きます」
『あやかしさん』
あやかしさんはずっと君を見ている。
なんでかって?
君が疲れているからだ。
いつの間にか置いてあった緑茶。
湯気も茶柱も立つそれは
あやかしさんが淹れてくれたんだ。
大丈夫
あやかしさんは悪い人じゃない
ちゃんとありがとうを言えるなら
あやかしさんはそっと笑って消えるだろう
あやかしさんは言った
「君はやさしい。だから私も付いて行きたくなった」
私はやめてほしいと言った
だってずっと見てくる。
私はとても不快だと。そう伝えた
そうしたらもう出てこなくなった。
緑茶も自分で用意した冷たい物が置き去り
でも、また見た。
今度は小さい女の子。まだ自分で歩けるようになったばかりの子。
そんな子に憑くくらいなら
また私に憑いてよ
そう言ったら
またあやかしさんは
緑茶を淹れてくれたんだ
でも冷たくて
凍っていて飲めないよって伝えたら
家が燃えたんだ。
これでまた温かいお茶が飲める
体を暖めて休むことができる
やっぱりあやかしさんは優しいな
ありがとう、あやかしさん
おやすみ
ジーと鳴く名もわからない虫がうるさく鳴く。
蝋燭はまた一本消えた。
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