第16話 相変わらせず
『相変わらせず』
この晩餐会には大いなる意志がある。
これは欠かすことのできない私たちのルーティーンであり、
また、命を守る…んまあ、そういうものでもある。
正直、食べる順番や噛む回数、スプーンに掬う量まで決まっているのは腹立たしい。鬱陶しい。もっと美味しく食べたい。
でも、命には変えられない。
これは私たちの宿命だから。
うんと昔のこと。私がまだこの子のように幼い子どもだった頃。
“掟を破ったことがある”
練習ならいい。
でも、完璧に覚えた状態で
わざと
間違えたフリをした。
スープをスプーンで掬わずに皿のまま飲んだ。
ぎろりぃ
ぎろりぎろぉ
舐めるように上から下から見る
血走った眼
よだれを垂らし
口から食べていた物がすべて出ている
鼻息も荒く
眼は飛び出そうで
ひぃーひぃー
全員が全員、何かに耐えているようだった
“そんなことあるはずないのに”
喰われる感覚に身体を蝕まれついに視線を動かすことすらままならなくなった。
だから、今なら私もわかる。娘であろうと同じことをされれば
同じように耐えねばならぬだろうと。
正直食事のときだけでいいのだが、
心配性な性分なもんで。
娘には申し訳ない。
あなたが大人になったらわかるよ。
“大いなる意志”
“異質なものは排除する動き”
“晩餐会”という名のついた
“神”の名を借りた
“ただの蹴落としあい”
“泥の塗りあい”
できない者には粛清を
できる者は嘲笑う
そうやって君の
この “世界” は
成り立ってきたんでしょう?ねえ?
だから、
“いつも通り”
を演じることは
あなたがあなたで生きていられるの
内なるものを出さずにね。
最後の晩餐には
甘いお菓子とお茶を飲みましょうね?
「はい!ほんとの終わりだよ!」
「すげえ!なんか、怖い話ってよりかは…」
「自分で想像すればするほど怖くなる話だったんですね」
「面白いな。ここまでやんわりした設定でも、どう転がっても怖いぞ?」
彼女は得意げに蝋燭を吹き消した。
※ “ ”の中身は同じ意味。
ここまで見るとは……
さては、僕と同族だな?
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