第15話 晩餐会

 火が消えない。

いくら仰いでも消えない。

仕方なくて吹き消そうとしても同じ。

でも、寺の子は焦ることはなかった。


「イタズラ好きなんですね」


どうやら“イタズラ”はバレていた様。


「あ、君そういう感じなんだ」


「意外と可愛いところあるんだね」


なんだこの感じ。

下に見られているのか?

馬鹿にされている様な

間抜けたBGMでも流れてそうなこの感じよ。


「次いきましょ。」


「そうだね〜私だね次?」

本当になんなんだこいつらは。




『晩餐会』

「最後の晩餐には、甘いお菓子とお茶がいい」


 昔から、自分の食べたいものなんて食べられなかった。

大人になったらその要望は通るものだと思っていた。


でも、現実はそう簡単ではなかった。

チカラの強い

権力のある者が全てを決めていた。

思えば起きる時間から

眠りに落ちる時間まで

一分一秒乱されることは許されない。


なんで?

なんで私のぜんぶが決められちゃうの?

本当は真っ赤なドレスも着たい

レースのカーディガンを羽織ってね?

それから、黒光りするカバンを下げて

髪の毛は金髪で毎日カールを自分で巻くの!


「ダメよ」


今日も古いおばあちゃんのお下がりの着物。

帯はもっと古い誰かもわからないもの。

髪留めは最近切れちゃったから母のをもらった。

あーあ。新しいの欲しかったな。

そう思うけど、今日もまた新しい一日が始まった。



「はい!これで一旦おしまい!」


「え?全然怖い話じゃなくないか?」


「ううん。“この子”のお話しは終わっただけよ?次は“母親”の話。」


「ほお。では次のお話お聞かせ願いましょうか。」


「はーい!」

彼女は再び正座に座り直した。

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