第17話 赤いりんご
「さ、次は俺だ!
感情に浸っている暇はない!」
おまえそんな熱血キャラだっけか。
『赤いりんご』
「りんごは好き?」
むかし、りんごを丸まんま父から貰った。
チョコだと思って食べた私は
しゃくっ
とした感覚にびっくりした。
匂いを嗅げば甘くてお花みたいな
食べれば噛むほどに甘い汁を味わった。
それはりんごを食べた最後の記憶。
父は知っていた。
りんごには毒が塗ってあって、私がりんごを食べたことがないことも全部。
食べさせた父は
「ごめんごめん」と平謝り。
りんご。
丸くてあんまり美味しそうな色はしてないけど優しい匂いがして。
そういえばりんごって…あ!そうだ!
りんごの皮は剥きやすくていい。練習すればするほど
“ヘビさん”
は長く同じ太さにできた。
私はりんごを食べないから、
代わりに父にあげた。
美味しそうに食べていた。
「こんなもんか」
いつのまにかりんごが旬の時期はとうに終わり、
新しいりんごの楽しみ方を発明していた。
りんご…ひと口大
はちみつ…スプーン二杯
牛乳…コップ半杯
これをミキサーへ。
毎日…毎日
来る日も来る日も
飲ませ続けた。
父が倒れた。
私と同じようにりんごに塗られている毒のせいかと思ったけど、
お医者さん曰く
「りんごに毒は塗られていないしそもそも、りんごの実に毒はない」
私がりんごを食べてはいけなかった理由は
“アレルギー”
体じゅう痛くてかゆくて。
でも父は倒れた。
アレルギーじゃない。
体にはぶつぶつも出来てない。
…やった。やったんだ!
お母さん、私ちゃんと約束守れたよ?
見てたでしょ?ねえ!!
りんごの種やヘタや芯を毎晩すりつぶして濾して粉にして。
あの日今までそうして集めた“毒”を全部入れた。
相変わらずりんごは好きになれなかったよ。
だって、チョコみたいに美味しそうな茶色じゃないんだもん。
あおいだ蝋燭の火は
ボウ…
と音を立てて消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます