第10話 尻尾切り

「なんで手で煽いだの?」

確かに寺の子は手で煽いで火を消した。


「口は災いの元…とよく言ったものだ。」

いやいや…どうしてそう雰囲気を壊す行為ができるものか。

……どうやらようやくそれらしくなってきたみたいだな。


「風、強いな…」

…とでもつぶやいておこう。


「次の話に行きますよ…?」

さすがと言っておこうか。寺の子よ。

が見えているなんて。

外ではがざわついている。




 『尻尾切り』

 昔から、日本は尻尾に関する言葉やことわざが多い。

「しっぽを出す」「しっぽをつかむ」「虎の尾を踏む」…などなど


 人間には尻尾がない。

まあなくても生活出来てるし、あったらあったで邪魔だって文句のひとつやふたつ出てきそうだ。


 その中で。知っているだろうか?『尻尾切り』という言葉を。

有名なのは「トカゲの尻尾切り」だろう。

敵から逃げるために尻尾を身代わりに自切を行う。

“昔から人間もそうだったのではないか”

トカゲの切った尻尾は生えてくる。

だが哺乳類でそれは難しかった様。

だから、最終手段として尻尾だけを敵に喰わせて本体は生き延びることはできた。

そうして命を紡いできた。

でも、その代償に尻尾は無くなってしまった。


なぜか。考えてみればおかしい。

いらなくなったわけではなく身を守るために切っただけ。

なら、尚更進化の過程でなくなることはないのでは?


ではこう考えたらどうか。

無くさずを得なかった…と。

“人間よりも高等生物がいる”……と。


そいつらの名は

ノボリビト

漢字で書くと

昇り人

またはアガリビトとも言う。

ヒトよりも強い存在。

それに勝てなかったから

身を守るために

人間は尻尾を切り離した。

もしかすれば罰ゲームだったかもしれないが。

力でも頭でも勝てなかった存在。


“今は下等生物になりきってるらしい”ですよ



僕はフーッと力強く吹き消した。

パタパタはしなかった。

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