オープン・ザ・窓
ぼくの収まっている病室は二人部屋。
同室はお上品な大先輩のお姉さま。
自宅での生活を目指して闘病をされておられる。
病棟はどこもかしこもピカピカでスタッフさんたちも忙しなくテキパキ働きとても良い場所なのだけど、空調があんまりだ。
寝ているばかりの僕らでもジトジトしてしまう位の室温25〜30℃なのだ。
空気は流れているのだろうけど、2人部屋のカーテンで仕切られた奥の窓側ポジションのぼくのエリアは常に蒸しているらしくスタッフさんが来るたび暑いですねとこぼしていく。
ぼくはほとんどベッドに沈んでいるだけだから頭を冷やすのをもらっては大人しく汗だくになっている。
そんな部屋と体勢には慣れてきたし、彼女のお世話になっていた病院では窓を開けてはいけないルールがあったから勝手に開けて良いとは思ってもいないし、そもそも窓を開ける体力すら今はなかったので気にしていなかった。
彼女の入院する病棟は小児科だったし、セキュリティの問題や空調も徹底的に管理されているところだったかそれはそれで素晴らしいと感じていたところのひとつではあったし。
この部屋は二人部屋だけど窓側のベッドで空が見えるし採光できてラッキーだなってのんきに考えてた。
昨日はたまたまブンブン飛び回る虫がでて、虫を嫌いな看護師さんが大騒ぎして窓を開けて虫を外へ逃してくれた。
そしてそのまま窓を開けて行ってくれたのだ。
別に誰の許可もなく開けて良い窓だったらしい。
彼女のお世話になっていた病院のイメージというかそれしか経験がないからこちらの病院との違いがいちいち興味深い。
病院も系列も違うのだから当たり前のことなのだけど。
とても暑く、風のなさそうな日だったので昼間はそんなに感じなかったけど、夕方になってやっとそよそよと入りはじめた外気はとても気持ちが良かった。
同室のお姉さまを冷やしては悪いし、さすがに消灯時間には窓を閉めなくてはいけないかと思って聞いてみたら
「お隣さんも暑がりさんだから別に開けたままでよいですよ」
とひと晩中開けおいてくれることになった。なんと寛容な。
久しぶりにびしょびしょにならずに眠れて心地よかった。
寛容な窓と風は偉大。
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