第25話 覆い尽くされる太陽

 ゴゴゴゴゴゴ——。


「な、なんだ…?!」


 大地が低く唸りを上げ、自分の身体を支え切れないほどに揺れる。

 怪獣大合戦の危機を脱したと思ったら、今度は地震である。

 明らかに、先ほどの戦いの余波——あの規模の魔法によって、引き起こされたとしか思えなかった。


(まさか……あれが原因か?)


 最後の衝撃で、大地にまで影響が出てしまったのだろうか。

 恐ろしいくらい静まり返った海へと近付いて、様子を見る。


 ——ボコボコボコ。


 海面が、音を立てて白く泡立っている。

 白い湯気が立ち昇るのが見えて、沸騰しているんだと分かった。


「っこれは、ただの地震じゃない…!!」


 バッと海岸から距離をとって、ついてきていたセカンドに叫び混じりの指示を出す。


「セカンド! 逃げるぞ…!!」

(えっ、なになに…?!)


 身体を硬く球体化して、ゴロンゴロンとタイヤのように走り出す。


(どうしたの、ハジメ…!)

「走りながら説明する! 良いから黙ってついて来い…!」


 俺の真似してスピードを上げたセカンドが、戸惑いながらもこちらの言葉を待つ。


「海が沸騰し始めてた…。あれは海底火山の噴火だ…! 最悪、大陸どころか世界中の生き物が死に絶えるぞ!!」


 直後、叫んだ俺の背後から、ドンッ、と大きな音を立てて黒い柱が立ち昇る。


 ——火山灰だ。


 空に舞う火山灰。巻き上がる海水。そして、太陽を覆い隠し始める黒煙。


 バラバラと落ちてくる大きな石を避けながら、俺たちは先に逃げていた仲間たちの元へと急ぐ。

 追い越した逃げ惑う生き物たちは、パニックを起こしている。


 海上には、大量の生き物たちの死骸と、戦いには勝ったはずなのに、沸騰した海のせいで死んでしまったクラーケンが浮かんでいた。

 クラゲも、節足動物も、スライムも。等しく死を迎えている。


(みんな、できるだけとおくに にげて!)


 思念が飛ばせる範囲に入ったのか、セカンドが視界に入った他のスライム仲間たちに警告を飛ばす。

 海から離れた事で様子を見守っていたスライムたちが、セカンドの指示で慌てて動き出した。

 上へ上へ。

 彼らはまだ来た事のなかった山を、登って行く。


 ——火山灰が周囲に降り積もり始めた。

 呆然と、山の頂上からみんなで空を眺めていた。

 空は赤黒く染まり、太陽は影に隠れ、日中なのに夜のような暗さが世界を包む。


「——何日、太陽が隠れ続けるだろう…」


 陽の光がなければ、光合成は止まり、食物連鎖の前提が崩れてしまう。

 さらに温められる事のなくなった地上は、どんどん冷えていくだろう。

 そうして地面も海も、世界が凍ってしまうのが“氷河期”だ。


「生き残れるのか? 俺たちは……」


 答えはなかった。

 けれど俺たちは、ここにいる。


 これから何が起こっても、俺はこの世界を諦めたくない。

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