第24話 始まり

 ——自然との共存を図っていた。

 でもそれは、俺のエゴだったのかも知れない——。




 クオオオオオ——!!

 ビシャ——!!



「なっ、なんだ…?!」


 遠くから、しかし確実に聞こえるほど大きな音が聞こえて、慌てて俺たちは森を飛び出した。


「な……っ?!」


 そこで見たものは、まさに「怪獣大合戦」とでもいうべきものだった。

 以前と同じ個体かは分からないクラーケンと、同じくらい巨大なウミヘビが、その身体を叩きつけ合い、さらには規模の大きな魔法を撃ち合っていた。


 ゴウッ、とウミヘビの尾が風を鳴らし、クラーケンの胴体を殴りつける。

 クラーケンが海面にぶつかる、それだけで大きな波が陸地に押し寄せた。


 クラーケンが雷撃をウミヘビへと放つ。

 強い電流はウミヘビの肌を焼き、ジュウと音を立てて焦げついた。


 余波を受けた海の生物達が、波に、電撃にやられ、ぷかぷかと浮かんでくる。


(海の生き物たちが、死んでいく……)


 しかし、俺にやつらを止める術はない。

 声を届ける事も、あんなに大きな生き物を物理で止める事も、何もできる気がしなかった。


(どうすればいい…? このままだと、いつか陸地にまで攻撃が飛んでくるかも知れない)


 恐ろしい、しかし決して有り得なくもない予測に、身の毛がよだつ。

 同じ考えに辿り着いただろう、他の陸上の生物たちも、我先にと山の方へと逃げて行く。


(ハジメ! ハジメも にげよう…!)


 セカンドが身体を押してくるが、俺は今回ばかりは逃げる気は無かった。


「——いや、俺はここで見届ける」


 それが義務だと思った。

 戦う事はできなくても、全ての生物を生み出した俺の。


(っ、じゃあ ぼくも のこる…!)


 その思念に、恐れを滲ませながら、それでも残ると言ってくれたセカンド。


(ぼくは さいごまで ハジメといっしょだ…!)


 強い強い決意と共に、同じ道を歩んでくれると誓ってくれた。


「……ああ、ありがとうセカンド」


 ひとりは心細かったけど、セカンドが居るからそれも和らいだ。


 ——ギュオオオオ!


 クラーケンの、力を振り絞るような声が聞こえる。

 体側面の発光器が強く光り輝いて、魔力を溜めている事が分かる。


「っセカンド、大技が来るぞ…っ!」

(うん…っ)


 クラーケンの姿がその光で掻き消えるほど眩く輝いた直後、広範囲に雷撃が放たれた。


 ギシャ——……。


 流石に至近距離で食らったウミヘビは、為す術もなく。バッシャーンと大きな音を立てて海の中へと沈んでいった——。




(——終わった?)


 そっと確認すると、戦いの終わったクラーケンも海へと戻って行くところだった。

 陸地への被害が軽微だった事に、俺はホッと息を吐く。



 ——しかし。



 ゴゴゴゴゴゴ——。


(っ?!)


 大地が大きく揺れ、身体が振動で飛び跳ねる。


「な、なんだ…?!」


 それが、全ての“始まり”であった事に、まだ俺は気付いていなかった。

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