第12話 冬の到来
——冬が来た。
徐々に下がっていく気温。
鈍く動かなくなる身体。
草は初めての冬に戸惑い、まだ青葉を茂らせている。
地上よりも、水中の方が温かい事が増え。
地中で殻をまとって冬眠するよう指示を出したスライムたちは、土の中へと潜り。
身体の水分を凍らないようにしたスライムたちは、それでも冷える身体を水に沈め。
体温を手に入れたスライムたちは、まだ元気に動いていた。
(寒いというより、痛い……)
何も対策をしなければどうなっていたのか。
それを確かめるため、俺自身は夏の戒めのためにも、“進化”を保留していた。
自分自身に遺伝子操作を行なうのは、すぐにできるからと言うのもある。
(凍り付いてしまった身体を無理矢理動かそうとするのは、人間でいう“肉離れ”みたいだ)
川に浸かって温まりながら、俺は身体の水分を不凍液化させた。
踏みつけた、凍ってしまっていた青葉は砕け、一歩間違えれば俺自身もこうなるのだろうかと身震いする。
(やはり“進化”の保留は間違っていたのか?)
川の流れに身を任せ、陸を眺める。
今の所は大丈夫だが、身体を不凍液化させるには、それなりの魔力が必要だった。
体温を持つようにしたスライムたちが体温を保つのなら、魔力は使い続けなければならないだろう。
(空気中などから吸収できる魔力には、限界がある。もし、使用する魔力が吸収魔力を上回ってしまったら…?)
水に身を沈めながら、俺はごく自然な疑問を抱いていた。
(俺はこのまま川に流されてしまえば、海に出られる。でも他のスライムたちはそうじゃない)
海底に沈んでしまえば、地上の冷たさからは逃れられるだろう。
しかし海に辿り着けず、魔力も枯渇してしまう個体が現れれば。
(——そのスライムは死んでしまう)
それは運命ではない。
自然でもない。
これは明確な俺の罪だ。
俺自身が選ばせた、仲間の“死”への道。
ふと、遠くの“共鳴”が途絶える。
仲間のひとつが、完全に沈黙した。
(俺が選んだ、最初の“死”だ)
間に合わなかった仲間が、これから次々と死に絶えていくだろう。
この手の届かない所で、静かに凍って。
ただ降り積もる雪の中に、埋もれていった“命”だった。
——海の底は、静かだった。
波の音さえ遠く、陸の冷たさも感じない。
海面に居たクラゲは凍ってしまった事で、夏と同じように死んでしまったが、大半の生物は生きている。
(海は、優しい……)
仲間を死なせるしかなかった俺も、受け入れてくれる。
(——俺は神じゃない)
全ての結果が分かる訳ではないし、思い通りにできる訳でもない。
(俺は“親”だ)
生き物たちは俺の意思で、俺の手で生み出した子供たち。
環境の厳しさに直面したのだとしても、全て淘汰されてしまうのは防がなければいけない。
創る事と守る事。
それが俺がこの世界にできる事だ。
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